第11話 大魔神VS天使


「先鋒戦、西蓮さんが中々攻めずら状況が続いており苦戦しているようにみえますね!」


「斉藤くんのプレイスタイルは守り重視でカウンターを狙うスタイルですからね。ガンガン攻めるタイプの西蓮さんには少し分が悪いかもしれませんね。」



やはり、西蓮先輩は眼鏡の斉藤のスタイルが苦手そうだ。 そもそもカウンターキャラを使っている斉藤に対して西蓮先輩は攻めが強いキャラなのでキャラ相性が良くないのだ。



「かなちゃん凄い苦戦してるけど、なんだか自信はありそうだったよね」



「なにか、考えがあるのかもしれませんね。ただの強がりの可能性もありますが」




(あの眼鏡ほんとに、嫌なプレイしてくるわね… でも私だってあの子達に負けていられないのよ!)



(私だって少しくらい、みくちゃんに安心してほしいもん…!)



「さぁ 西蓮隊の先鋒が追い込まれましたー! ここから粘れるかー!」



(あはは…! 西蓮の奴、相変わらず馬鹿みたいに攻めてくるな。 このまま勝たせて貰うとするか…!)





(でも段々あいつの癖もわかってきたわ…!

私はガンガン攻めるしか出来ないから、あいつの癖を読むしかないわね!)


(ふふっ 押してダメなら押し通せ作戦よ!)



「おーっと! 西蓮さん!攻めの手を緩めるどころか、攻め手を増やし相手の守りを崩して行きました! これでファイナルラウンドです!」


「流石の斉藤くんも、あの攻め手の数に対応しきれなくなってきましたね。さぁどちらが勝つのでしょうか。」



西蓮先輩の自信はこれだったのか。



「なにかあると思いましたけど、西蓮先輩らしいですね。」




「かなちゃん昔から守るの苦手だったから… でもかなちゃんがあんなに格ゲーに

真剣なの初めて見たかな」



西蓮先輩も僕らと一緒だ。勝ちたくて目の前の敵を倒すのに真剣なんだ。

格ゲーに真剣な西蓮先輩の姿はなんだかとてもかっこいいと思った。



「なんと西蓮さんが攻め続け、斉藤くんを倒しきりました! 流石と言った所でしょう!」


「前半は斉藤くんも守れていたんですが、

後半は西蓮さんの攻めに対応しきれず負けてしまいましたね。両者ともGGです。」


2人の接戦の試合に会場の観客も盛り上がりっていた。そして眼鏡の斉藤はとても悔しそうにしていた。



「くっそ! 西蓮の奴、攻めを辞めるどころか、攻め続けやがって…!」



「今回は、私の勝ちね! でも流石の守りだったわ。このまま私達が勝つわ!」



「まぁいいさ。僕はあくまで先鋒に過ぎない。君達にあの2人が倒せるかな?」



「あんたの仲間なんか私一人で充分よ!」


斉藤のチームはずっと先鋒が勝ち続けてきたのでまだ、残りの2人は出てきていない。

どんな人が来てるのだろうか。



「さぁここで中堅の登場ですが、なんという事でしょう! あの大魔神兄弟の弟が出てきました!」

「情報によりますと本日は兄弟にて出場してるとの事です。あの兄弟が出てくるとは流石の西蓮さんも危ういかもしれませんね。」



あの兄弟は対戦はした事ないが、僕も知っている。まだ、ゲーセンでの対戦が主流な頃、遠征にて色々なゲーセンを回り、そこのプレイヤーの段位を落としまくって帰るという人達だ。余りの強さに

大魔神という異名がついたそうだ。




「斉藤よ!あんなか弱い女の子に負けるなんてお前もまだまだやな!」


「…っく! 面目ないよ。でも君達が居れば大丈夫だろ。」


「まぁお前一人で充分だと思ってたが、仕方ない。俺らも久々の大会だ。暴れさせてもらうぞ。」



西蓮先輩は少し不安そうな顔をしていた。


「大丈夫ですよ。西蓮先輩の勢いなら勝てますよ」



「…ま、まぁ今日の私強いからね… でもあの二人昔私のホームのゲームセンターにも来た事があってそこで初段まで落とされた事があるの…」


西蓮先輩は弱くない。だけどそこまで落とされるのか… 相当強いんだなあの兄弟。


「かなちゃん大丈夫だよ。私達が居るから

最後まで頑張って」



「ありがとうー!みくちゃんー!」  


西蓮先輩は元気にお礼を言っていたが、僕にはとても不安そうにみえた。



「さぁー!決勝戦中堅先鋒戦、試合開始です!」 


試合が始まった。西蓮先輩の勢いは変わらない。攻め手の数も、攻め方も今までで一番仕上がってる。先にリードを取ったのも西蓮先輩だった。



「勢いが止まらない西蓮さんだ!このまま大魔神兄弟をも倒してしまうのかー!」


リードを取った次の展開、西蓮先輩の攻めが一切通用しなくなった。

人読みのレベルではない。圧倒的な実力差があった。

西蓮先輩はそのままなすすべなく負けてしまった。



「なんということでしょうか!今大会で間違いなく勢いのあった西蓮さんを

圧倒的な強さで倒しました!」 


「最近は大会には出場していなかったので大魔神兄弟のプレイを見ていなかったですが圧巻の強さですね。」


噂には聞いてたがここまで強いとは…

西蓮先輩が悔しそうな顔をして帰ってきた。


「あはは… ごめんね 負けちゃった」


「西蓮先輩のおかげでここまで来れたんです。後は僕たちに任してください。」


次は橘さんの出番だ。大丈夫、橘さんなら勝ってくれる。


「かなちゃん 大丈夫だよ よく頑張ったね。」

橘さんは西蓮先輩を優しく抱きしめた。 

西蓮先輩は泣きそうになりながらも、もう大丈夫だよと言って橘さんを撫でていた。


「次は橘さんですね。相手の人相当強いですけど橘さんなら勝てます。」


橘さんは笑顔でこちらを振り向いた。


「ありがとう中山君。もう大丈夫だよ 今は私全然怖くないんだ。」

「だって中山君が居てくれるから。」


そう言って橘さんは自分の長い髪を縛り、真剣な顔で対戦席に向かった。




「ここで西蓮隊の中堅で登場したのは先ほどの美少女プレイヤーですね!実力差はありますが頑張って頂きたいですね!」


「先ほどは実力が出し切れてなかったかもしれませんからね。健闘してもらいたいですね。」


「では決勝中堅戦試合お願いします!」


この試合はみんなが橘さんが負けると思ってるだろう。僕たち以外は。


誰よりも橘さんが強いと信じてる。ここで負けるはずがないんだ。






僕は今日二回目の衝撃を受けた。







僕が知っている以上に強い橘さんがそこには居た。




「これは…あの大魔神兄弟が手も足も出ていません! まるで大魔神が

可愛い小悪魔になったようにみえます!」


「実力が出せていなかったとは思っていましたがここまで強いとは。

間違いなく僕らの想像を超えてきましたね。」



対戦席には格ゲーを心から楽しんでいる橘さんがいた。ただひたすらゲーム画面を

見つめ、笑顔で対戦をしている。


僕はこの橘さんが見たかったんだ。



そして、あの大魔神兄弟の弟を完全封殺した。



「これは予想できなかった展開でしょう!大魔神兄弟の弟を完璧に倒してしまいました!私興奮が止まりません!」


「これは、もう大魔神を倒す天使でしょう。僕も思わず声を上げてしまいました。」


勝てると思ってた僕ですら圧倒的な強さに驚いていた。



すこし追いついたと思ってたんだけどな… 凄いよ橘さん




「さぁ!これで大将の大魔神兄弟の兄が出てきました!天使を倒す大魔神になれるのかー!?いよいよ今大会最後の試合です! 皆さん最後まで盛り上がっていきましょう!」





格ゲーは人を夢中にさせる。



そして夢中になって格ゲーをしている橘さんを僕はだたひたすら見つめていた。


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