第4話 閑話 この街一番の召喚士
この街で最強の召喚士は誰か?
もしそう聞かれたとき、俺はそれが自分であることを教えるだろう。
しかし、街一番の召喚士は誰かと聞かれたのならば答えは違う。
俺は不本意であるがと不機嫌そうな顔になってアイツと言いながらある人物を指差すだろう。断じて俺ではないのだ。
召喚獣の力によって一人で戦闘に必要な役割の全てをこなせる万能型の能力を持つのが召喚士だ。
召喚士によっても得手不得手はあるが、基本的にはどのパーティーにも引っ張りだこだ。
一般的に言えば、召喚士であるというだけで迷宮攻略者の才能を認められる。
召喚士に唯一の弱点があるとすれば、それは召喚士自体のタフネスの脆さだ。
戦士は物理的な攻撃に強く、魔術師や聖道師は物理的ではない特殊な攻撃に強い。
仙人や魔剣士などはある例外を除けばどちらにも強い耐性を持つ。
召喚士はどんな攻撃にも弱い。より具体的に言うと、戦士よりも魔術に弱く、魔術師よりも物理に弱い。
それも召喚獣の存在によってカバーできることでもあるので致命的な弱点とまでは言えない。
普通は召喚士よりも召喚獣のほうが強い(例外みたいな人もいるにはいるが)。召喚士の役割とは召喚獣のポテンシャルを引き出すことにあるのだ。
才能のある召喚士は召喚獣の力を極限以上に引き出すし、才能のない者は1%だって引き出せない。
けれど、たとえ1%であっても強力な召喚獣であれば一騎当千の力を発揮する。
全ては運次第だ。どこまでも強くなれるが、どこまでも運に左右される。それは召喚士の宿命だろう。
つまりは強い召喚士とは引きの強い召喚士ということであり、優れた召喚士とは召喚獣の力を発揮させることのできる召喚士だ。
前者が俺で後者があいつだ。
限界以上に召喚獣の能力を引き出すという優れた才覚を持ちながら、スライムだけを召喚し続ける歪な召喚士、アイツこと佐藤優太。
平凡な容姿と名前を持ち、平凡以下の召喚運に、非凡なる召喚士の才能を持ったどこまでもアンバランスな俺のライバル。
くやしいがアイツこそが街で一番優れた召喚士であるということは、俺にとって業腹だが認めざるを得ない事実だ。
ある日のこと、そんなアイツが召喚のし過ぎでぶっ倒れたという噂を耳にた俺は、久しぶりに迷宮街から帰還することに決めた。
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tips: 基本的に戦士や魔術師といった名称は便宜的なもの。人間が超進化を遂げた際に人それぞれ能力に偏りがあった。逸脱した体力や膂力を発揮する者、魔法としか思えないような超常的な現象を起こす者、未知の生物を喚び出す者など人それぞれ個性があった。最初のうちは各々が好きな呼び方で名乗っていた。
現在迷宮攻略者協会のトップに立っている人物が立ち上げの際に、攻略者の名簿などの資料の整理に不便であるからと言う理由で能力の調査部門を立ち上げ、同様の能力を持ったグループに分類として名前を付けたのが正式な名称として使われるようになった。
しかし、よしこのようなどれでもないような能力者は稀に存在するので、すべての人に決められた名前があるわけではない。よしこの場合は知らないおじさんに勝手に名付けられた(本人談)
単なる能力の分類に過ぎないのだが、勘違いした人の中には職業扱いをする人もいる。
大体の人は戦士の能力、あるいは単に戦士と呼んだりしている。
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