第4話 ビールが苦手な近衛兵はネコである。あ、いや普通の意味でね!



 もう少し飲んでみる。確かに昔感じた苦味と比べればそこまで酷くないかー。ニオイはナシナシのナシだけど味は気にならない程度だなー。メーカーの違いかー。ゴクゴクと一気に飲み干した。


「おー。飲み方が男らしいですね」


「えぇ騎士ですから。そー言えばビールは20歳の頃飲んで2年程…飲んでなかったかもです。」



「え?騎士?ってか…今年何歳?23歳?なら同い年ですね」


「え!マジ?須藤氏23?誕生日がきたら23です。なーんだぁ。同い年かぁ。

中2の時中2?はははははっ!

 マジか!んじゃ敬語はなしだぞ!コノヤロー!ははははははははははっ!」


「氏…」


「あっ!ビックリして脳内の呼び方が飛び出した!あははははははっ」


「そーだね。敬語はなしだね。シアンちゃん」


「あー!そーだねマナト氏あははははっ」


「氏…シアンちゃん面白いね」


 なんかビールが…また来た2杯(白目)


  おい呼んでねーぞ!ビール


 コレを飲み干したらタッチパネルを奪還し、カシスグレープフルーツを頼む!

絶対にだ!


 近衛騎士だから気合いでビールを飲み干して甘いカクテルを注文した。


 ひと息付いたので、気になってた事を聞いてみた。

 

「ねねねねねねねねマナトきゅん、この駅が会社の最寄り駅?

あー。とーとーしゃべりにくくなってきたぁー」


「ふふふ。舌足らずなシアンちゃんも可愛いよ?

 

 そーそ。ココから歩いて5分くらいの川沿いのセントラル・コーポレーションってとこなんだけど知っ「えーーーー!めっちゃ大企業じゃん!そしてめっちゃウチの近くだよ!終電なくなったらいつでもウチにおいで!もーなんならウチから通う?あはははははははっ」


「え!いいの?…シアンちゃん彼氏は?」


「彼氏なんていないよぉー。めそめそ」


「めそめそ言ってる。ふふふっ。シアンちゃんホント面白いね!可愛いし一緒に居ると楽しいや。そっか彼氏いないんだね…」


「お!私と居るの楽しい?癒されるー?

これがっ!

これがっ!需要と供給っ!

ギブアンドテイクというヤツですなっ!

 丁度私もペットを飼いたいと思ってたんだよー!」


「え?どーいう…、ペット飼うの?」


「そーなの!今日帰ってる時に丁度思ってたの!

1人寂しいなぁって。だからマナトきゅん遊んでーっ!癒やしてっ!」

 

「ん?うん。よく分からないけど、シアンちゃんが俺と遊んでくれるの?1人だと寂しいもんね」


「とにかくめっちゃ遊んでくれたまえっ!」


「うん分かった。よろしくねシアンちゃん」


 とニコニコ笑ったマナト氏は右手をさし出して来た。

両手で撫でくりまわしてやった。むはははは!


「うむ。良い飼い主になるぞよ。期待しておれ。いっぱいおいしいご飯と可愛いお服もおもちゃも買ってあげるからねぇ。

 よーしよしよしよしよし。よーしよしよしよしよし」


 手を伸ばしてマナトくんの耳の後ろから首筋に掛けてをこしょこしょした。


「え?どっちが飼い主?ふふふくすぐったいよー」


「え?そりゃ私じゃんか」何言ってんだ。


「あ、そーなの?でも、日替わりで飼い主交代するのもいいんじゃない?」


「何それ!面白そう!やるやるー!んじゃ私ネコぉー!見て見て!にゃーす!」


 招き猫のポーズ。


「…っ!ぐっ…………耳……わ……しっぽ…

 やっぱり……

………なら………解さ…とな。」


「んー?なんて?」


「ん?シアンちゃんネコ似合うなーって、種類は何かなぁって」


「あーやっぱネコ様が至高ですにゃー。

えー、私なら、、何だろエキゾチックショートヘアじゃない?」


「どんな子?」


「ちょい待ってね?…ぐーぐる先生に画像を…ほい」


「全然ちがーーーーう!」


「そんな声張る?あははははははっ!」



 マナトくんのピッチが早くて同じタイミングで注文を促されるから相当飲んでいる。


 マナトくんは優しく笑い掛けてくれる。

いっぱい話しを聞いてくれる。


 色んな勉強をして得た知識を、今知ったみたいに優しく教えてくれる。マウントをとってバカにしたりしない。


 息が出来なくなるくらいバカ笑しても冗談を言っても不機嫌にならない。


 他の人みたいにうるさいから笑うなって怒ったり、何が面白いのか分からない。ってバカにしたりしない。それどころか、一緒に笑い転げてくれて、もっともっと面白い形に変えて笑わせてくる。

 

 掛け合いをし続けて2人してめちゃくちゃに笑った。


 この時はまだ気付かなかったけど、こんなに楽しい時間を過ごしたのは初めてだったのかもしれない。


 

 久しぶりのお酒に久しぶりの楽しい時間を過ごして完全に飲み過ぎているから、そろそろお水飲んで!と言う自分と、いいんじゃなぁい?楽しいし〜。とフワフワ楽しもうとする自分が、黒板の落書きを消しながら、やいのやいのと言い合っている。


 『ちょっとー黒板消しココでパンパンしないでよぉ。』


んあ?ウトウトしてた。。何時だろ。え?2時前…あちゃー。1時間くらいで切り上げるつもりだったのに!︎帰ろう。



「マナトくんマナトくん!

ごめんね!帰ろ!タクシー乗れる?オウチどの辺?おーい…


ふぉーーーー。。

マナトくん暇過ぎて寝ちゃったんだん、、」


 そりゃそーかぁ私マナトくんを放置して寝ちゃったのか。。サイテー…。わたし…。


 シバキ倒してくれればよかったのに。この子はホントにいい子だなぁ。泣ける。



 おーい帰ろー。おいおーい。おいおいおーい。おーい。と何度か声を掛けてゆすり起こしてみようと試みたが、むにゃむにゃ返事をするだけで全く起きなくて途方に暮れた。



 

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