第23話 猫神様を待つ。

 二十五日。

 俺を含め、早瀬家の人間は全員寝ていないようだった。

 なぜか眠気も来ない。食欲もない。

 まるで死んでいるかのように、生理的欲求がないのである。

「なんか……虚無だね」

「そうですね」

 時間的には、現在昼。

 ただもう外は赤みがかった霧で覆われているせいで、昼という感覚はない。ずっと夜みたいなものだ。

 俺と一緒に縁側で変わり果てた二岬の姿を一緒に見ている文さんが、虚無だと言っているように、まるで生きているような感じもほとんどしない。

「この外のどこかに、猫神様がいるんだよね」

「そうですね」

 文さんは、ボーっと外を見たまま、ゆっくりと言った。

「ちょっと心配だな。何してるんだろ、猫神様」

「……きっと大丈夫ですよ。神なんで」

「そっか。神だもんね。大丈夫か」

 外の様子は変わらない。

 肌寒く、夏の様子もない。

 そんな外の様子を、猫神様の帰りを、俺たちは待つことしかできなかった。

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