第17話 猫神様の異変

 十八日。

 今日は日曜日。

 今日も曇りで、少しだけ霧が出ている。それに、朝だからかもしれないが、この時期にしては涼しいような気がする。ちなみにここ数日はずっと曇っている。そして、気温もずっと涼しい。

 今年は夏が終わるのが早いなあと思いながら、今日も仏壇の文さんのお父さんとおばあちゃんに挨拶をする。

 仏壇に手を合わせるのをやめて、目を開くと仏壇に強烈な違和感を感じた。

 ……なにかこの仏壇のどこかに、俺が見落としているようなものがある気がするのだ。

 しかし、仏壇をよく観察しても、見落としているものを見つけることはできなかった。


 昼間。

 夏バテなのか、俺や文さん、猫神様や美文さんも食欲がない。

 なんだか、やる気もないみたいで、みんな畳の部屋でごろごろしたり、縁側で静かに過ごしている。

「天気予報……こっからずっと曇りだ……」

 文さんは、携帯を見ながらひとりごとのように呟いた。

「文さん~気温はどんな感じですか?」

 縁側でごろごろしている文さんに、俺は畳の部屋から声をかけた。

「気温も最高で二十二度。そんなに上がらないみたい」

「ええ……まるで秋みたいですね……まだ八月もあと大体二週間あるのに……」

 もはや異常気象と言ってもいいのかもしれないが、テレビでもスマホの天気情報でも、まだそういう情報は出ていない。

 そもそも、みんなやる気がなかったりするのは、多分急な温度変化のせいかもしれない。気温の急激な変化で、体調を崩す人だっているからな。

「ほにゃ! なんでにゃ!」

 突然、庭で猫神様が叫んだ。

 俺と文さんはその声を聞いて、猫神様のところに小走りで向かった。

「どうしたんだ~?」

 俺は猫神様のもとへ着くと、猫神様に何があったかを尋ねた。

 猫神様は、自分の両手を見ている。

「……霊体化……できなくなったにゃ」

 猫神様は、少し困った顔で言った。

「え……本当にできないの?」

「できないにゃ! 霊体化してちょっとぷかぷかお散歩でもしようかにゃって思ったら、霊体化できなくなってたにゃ」

 文さんが猫神様に尋ねると、猫神様は冷静にそう言った。

「猫にはなれる? 猫神」

 猫神様の声を聞いて、駆けつけてきた美文さんが、猫神様に尋ねた。

「えっと……よっとにゃ」

 猫神様はその場で一回転すると、ボンという音を立てて、猫に変わった。

「なれるにゃ。ほんと、霊体化だけできないにゃ」

 猫の姿になった猫神様は、そう言った。

「なんでだろう……猫神様もわからないんだよな?」

「うん。わかんないにゃ」

 猫神様は、また人の姿に戻った。

 結局、猫神様が霊体化できなくなった理由は、わからなかった。

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