6話:嫉妬
颯人が陸上をはじめたのは、絢斗という同級生の影響だった。
絢斗は一言で言えばクラスの人気者。
明るく、誰にでも分け隔てなく接して、運動神経も抜群。そんな絵に書いたような人だ。
幼少期から人見知りだった颯人は、小学校に上がっても変わらず、友人ができなくて塞ぎ込んむ日々が続いていた。
そんな時に、ひょんなことから絢斗が声をかけてくれて、徐々に仲良くなっていった。運動神経が良い彼に誘われて、近所の周りを走り出したのをきっかけに2人で陸上に打ち込むようになった。
颯人はぐんぐん頭角を表して、小学校の大会も県の大会も、良い成績を残せることが楽しくて走り続けた。
ふと気づいたら絢斗よりも随分と良い成績を残していた。
*
自分が早くなればなるほど、絢斗の顔が曇っているような気がした。
中学に上がってからはクラスも離れて、話す機会が減ったことも関係していたと思う。
俺は、絢斗が俺に嫉妬して、俺を嫌いになってしまった。と思いこみ始めた。
そんな思いに支配された俺は、数ヶ月前の大会で、絢斗と順位を競う大会で、手を抜いた。
このことに怒った絢斗が大会後、俺に掴みかかってきてー。
*
なにがどうなったか、あまり覚えていない。
気がついたら絢斗は怪我をしていて、しばらくは走れないと診断を受けて、入院をしていた。
当然のように、俺は優勝できなかった腹いせに親友に怪我をさせた奴という誤解をされた。
俺と絢斗の喧嘩を見ていた友人はそんな誤解をすることはなかったが、関わりの薄いクラスメイトや元から俺のことをよく思っていなかった奴らは聞く耳を持たなかった。
それに、俺も訂正しなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます