蛇の試練
4話:試練
「で、どうやってここに来たかは分かったけど、どうやって帰るの?」
夢なのか現実なのか、よくわからないけど、俺の頭はキャパオーバーだ。
今の状況、いじめもどきのこと、あの事件のこと、、。
「んぇ〜やっぱり帰っちゃうのぉ?」
『クロ、わがまま言わないの〜』
「ちぇっ、やーっと人間が遊びにきてくれたのに」
ぶつぶつ小言を挟み、拗ねた様子の黒うさぎと、それを宥める白うさぎ。よく似た顔だが、黒い方が少しだけつり目で、白い方は目がくりっとしている。
いろいろなことが起こりすぎて気づかなかったけど、うさぎ達は身長120cmくらいで、小学校低学年くらい幼い顔つきをしていた。
少し拗ねたような顔つきも年相応?でなんとなく可愛らしい。
「向こうの世界に帰るにはね、また条件をクリアしなきゃいけないよ」
『僕らはそれを試練って呼んでるよ〜』
「なかなか難しいからね、クリアできない時もあるし」
『クリアできる時もある!そんなぐあいだよ〜』
「いや全然わかんないけど、、」どんなぐあいだよ。心でそう突っ込みを入れる。
「で、その試練ってなにやったら良いの?痛いのとかは勘弁なんだけど、、、」
なんとなく難しそうな感じがして、恐る恐るそう尋ねる。
「んーっとね、人によって違うんだよねぇ」
『人によってさ、罪っていうの?乗り越えなきゃいけない壁って違うじゃない?』
「その人が抱えている、お悩み?闇?からぴったりな試練を与えるんだよ〜」
『だから、これっていう試練はないんだけど』
「颯人くんはね、嫉妬の試練だよ」
「嫉妬の、、試練、、?」
『そう。一番難しい試練かもしれないね』
*
「一番、難しい試練?」
ただでさえ難易度が高いって言ってたのに、その中でさらに難しいの??えぇ〜、、、。
急に怖くなって、少しだけ声が震えているのが自分でもわかる。
「あっ、シロ!おバカ!」怖がらせちゃったじゃん!と言いながらクロがシロの頭をぽんっと優しく小突く。
『わわわ、ごめんね!』
慌ててシロがそう謝り、補足補足〜と付け足す。
2人の説明を合わせると、こんなことだった。
この道をまっすぐ進むと、試練の案内人が待っている。案内人の指示に従って、試練クリアに挑戦する。
クリアできれば鍵が手に入り、その鍵を使って扉を開ければ元の世界に戻れる。
「颯人くんの後ろにあるのがその扉ね」
『緑の扉ね』
言われて振り返ると、鮮やかな緑色の扉が目に入る。教室の扉の半分くらいの幅か?金色の取手がついた扉が俺のすぐ真後ろに佇んでいる。
「ねぇ、このドアなんか変なんだけど、、」
扉の後ろは、前方の景色と同じ一本道が続いているだけで、どこにも繋がっていないのだ。
「大丈夫、ちゃんとその先は繋がってるよ」
『鍵を開けたら、先はあるよ』
2人はそう優しく微笑んで答えた。
じゃあ、僕らはここまでしか案内できないから。ごめんね。
少し寂しそうな顔でそう言う2人に手を振って、延々と続く道に踏み出した。
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