第2話 謎の手紙
ある日のことだ。
「お願い、配達の人! この手紙を届けてください!」
おそらく自分より歳上で、同じ学校ではなさそうな、金髪の女性だった。
侑惺が「あの……」と口を開きかけたところで、その女性は侑惺の手にねじ込むように封筒を押し付けると、切羽詰まった様子で走り去ってしまった。
「この手紙をどうしろって? それに、配達の人ってひどくない?」
思わず独り言をもらす。わざわざ自分に託すのだから、きっといつものように後藤
「あれ……? 違うな、これ」
封筒に書かれた宛名と思われる文字は、どこか英語圏以外の外国語のようで、侑惺にはさっぱり読めない。切手もなければ住所もない。
「実は後藤宛て? それとも違う?
うーん……マジでどうしたらいいの、これ」
生ゴミの袋を
なんだか最近、カラスが多いなぁとは感じていた。正確には、カラスみたいな黒い鳥。けれど侑惺が友達にそれを言っても「そうでもない」と返されるし、自分の考えすぎかとも思っていた。
それが、こうやって
侑惺は全速力で逃げながら、背後の様子をちらと見る。カラスに襲われているというだけでもおかしな状況だというのに、いつの間にかカラスに混じって黒い山羊が
間一髪でその突進を
ここは、なんの
侑惺は人一人がようやく入れるくらいの建物の
狙い通り、大きな山羊は入ってこれなさそうで、少しだけホッとして息をつく。ただしカラスはお
「ほんと、なんなんだよ! この状況!」
学生カバンを
「逃げるよ」
侑惺の目の前に立つ男が言った。かなりの長身で、綺麗という言葉が似合う顔立ちをした男性だ。
「え?」
「
男は侑惺の腕をひっぱって立ち上がらせると、路地とも呼べないこのせまい隙間の奥へ行くように促した。
隙間を抜けると、男は侑惺の腕を掴んだまま、足早にどこかに向かう。
「えっと……どこに行くんですか? 黒山羊ってあのでっかい黒い牛みたいなやつのことですか?」
「四つ足は大型の黒山羊。鳥っぽいのが、小型の黒山羊」
「あの鳥は、カラスじゃないの?
「そう。姿は確かに似ているけど、まったく違う生き物だよ。手紙が黒山羊たちの
君の持っている手紙が、よっぽど美味しそうな匂いでもさせていたのかもね」
「意味わかんない……」
「詳しいことは中央郵便局で説明があると思う」
「郵便局って……あの郵便局?」
「“あの”が指しているものはわからないけど、おそらく違うんじゃないかな」
男はいつの間にか掴んでいた手を離していたけれど、侑惺はそれでも彼についていっていた。
彼になんだか怪しさがあったことは間違いない。けれど、なにより、自分がなぜあんな目にあったのか、謎を解きたいと思ったし、不思議と彼の
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