その手紙、異世界にもお届けします
冲田
第1話 ラブレター
中学生になってから増えたなぁと思うこと。彼にとってそれはそこらへんを飛んでいるカラスの数と、それから……。
「あの……
少しはにかんだような表情で、クラスの女子は彼の学生服の
「えっと、この手紙なんだけど……」
女子はおずおずと
いつもここまでは、ひょっとして? と侑惺も期待をするのだ。
女子は中学生になってから、恋の話が格段に増えた。小学生の頃とは比較にならないほど浮き足立って、恋人になってくれる人を探している。
だから、自分の番がそろそろ回ってきてもいいのではないか、なんて、男子中学生としてはソワソワしても仕方がない。
「この手紙、後藤くんに渡してもらえないかな……」
「うん、知ってた!」
侑惺は、
「自分がモテないからって、あからさまに嫌そうな顔しないでよ!」
「文句があるなら、俺を
「だって、他のクラスに行って、
「じゃあ、なんでラブレターなんて方法を選ぶわけ?」
「だって、連絡先知らないし……チャットで告ったら百
「手紙だから成功率が上がるとも思わないけど」
「『直筆の手紙がいいな』って後藤くん本人が言ってたって、確かな情報があるんだってば!
とにかく! お願い! 後藤くんの幼馴染で親友の嵯川くんに頼むしかないんだよぉ!」
「……渡すだけだからな。どうなっても俺の責任じゃないからな?」
「もちろんだよ! わぁい、ありがとう!」
そう。侑惺が最近増えたなぁと思うことは、友達
クラスメイトに限らず、もう何通もの手紙を後藤に届けている。
侑惺はなんとも
放課後、後藤と一緒に帰路についた
後藤は
侑惺が知っている限り、幼稚園の時は何人もの女の子が後藤と結婚の約束をしようとしてたし、小学生の時もモテエピソードには事欠かなかった。
後藤は「ありがとう」と手紙を受け取りながらも、
侑惺が手紙を受け取って
「えー……。中身くらい確認しろよ。
「自分で届けるべき手紙を人に
「そう言って、一応持って帰ってはいるんだから、本当はこっそり読んでる?」
「いや、そのへんに
「どうせ手紙の
「手紙をもらえるのは
「意味わからん。読まないくせに」
こんな薄情なやつだと知っていても、女子はまたコイツに宛てて、手紙を書くのだろうか。世の中不公平なもんだと、侑惺はまたため息をついた。
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