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気づけば日が昇り切っていた。

後はただ降りて、数時間の暗闇をもたらした後に再び昇ってくるだけ。

心の中心で暴れ回っていた絶望がようやく落ち着いた頃、建物と建物の隙間から注ぎ込む光を受けて輝く水溜りを眺めながら考えたのは自分のこと。

たった数分で俺の人生を狂わせた、自身に起こった赤黒い現象のこと。

「なんなんだよ...」

頭を抱えた。正確には髪を抱えた。もっと言えば抱えるのではなく鷲掴みにした。

自分のことは自分が1番知っているはずなのに何も分からない。

でも仕方ない。

多分この世で1番の天才であっても分からない事が俺なんかに分かるわけがない。

そんなネガティブな考えのせいで再び心の中心に向かって進み出した絶望を止めるべく、世界一の超難題に挑んでみる。

Q 変わった原因は?

A これはマジで分からない、別の質問にしよう。

Q2 何が変わった?

A 車に轢かれても、かなりの高さからかなりのスピードで壁に激突しても傷一つ負わなくなった。

手や足から赤黒い模様を放出して車を吹っ飛ばしたり、自分が吹っ飛ぶことができるようになった。

この路地に来た時を思うと、方法は不明だがある程度のコントロールは効くと思われる。

質問 終


やっぱ分からん。

全力で分かろうとはしたのだが惨敗した。

しかしもし分かったとして、それが一体何になるというのか。

どうしてこんな体になったのか、この歩く爆弾みたいな体で一生を過ごしていくのか。

どうせ解けないのに謎はまだまだ浮かんでくる。

そして一番の謎、というより不安は今後どうするか。

過去に目を向ける事でほんの一瞬は逃げられたが否応無しに向かってくる未来からは決して逃げられない。

何処へ行こうか。

なんて事は思わない。

薄暗くて汚い場所だが、それ故にどれも来ず、安全なこの路地裏から離れる気にはなれない。

ずっとここに居続けるのは無理だしこんな所にいたって何にもならない。

このままじゃダメな理由は全部分かる。

でも嫌だ、怖いから。

自分一人では無理だから、誰か助けて欲しい。

そう思った時だった。


「はじめまして」


声がした。これからウンザリするほど聞くことになる、彼の声が。


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