隣の席の魔法少女

@nonnon13

隣の席の魔法少女


 読んでいた本から顔を上げて時計を見る。

 11時30分。少しお腹が空いてきた気もするけど、まだお弁当を食べる気にならなかった。今は手元の本を読んでしまいたい。

 図書館は静かなものだ。最寄駅から1つ乗ったところにある市営の図書館は蔵書量がそこまで多くないけどそのぶん読みたい本が探しやすい。

 一度カフェが併設されている大きな図書館に行ったところ、蔵書の多さとお洒落なレイアウトに気圧されて落ち着かずずっとウロウロしていた。

 私としてはこういうこじんまりとしたところの方が落ち着く。

 

 また本に視線を戻そうとしたとき、入り口に人影が見えた。

 私と同い年くらいの女の子が息を切らせて入り口の自動扉に手をついている。

 よほど急いでいたのかセミロングの髪は無惨にボサボサになっていた。

 平日なのにパーカー姿で何故か手には女児向けアニメにありそうなハートと羽の飾りがついたステッキを握りしめ、キョロキョロとあたりを見まわす。


 あ、目が合ってしまった。

 彼女は私を見るなり目を見開き、脇目も振らずにずんずんとこちらに歩いてくる。手遅れだと思いつつ目をそらした。

 彼女は本を手に取ることなく私の左隣の椅子を引く。

 児童書コーナーの椅子は他の閲覧席より椅子がかなり低く作られている。

 もちろん利用者の大半が子供だからなのだが、本を読んでいるなら高校生以上でも椅子の利用は許可されている。

 女の子は椅子が低いのに気がつかなかったのか、座ろうと腰を下ろして一度不自然な中腰で止まってからゆっくり座席にお尻をつけた。

 私にも覚えがある動作だ。思っていた位置に座面が無くて一瞬焦り不格好な空中椅子になる様子は横から見てるとおもしろい。


 つい笑いそうになって慌てて本に視線を落とした。

 本の文字を目で追うフリをしながらどうしよう、と謎の焦りに駆られる。

 なんで隣に座って来たかは分からない。

 入れ違いに席を立ってしまえばよかったと後悔する。右隣の席は人がいないのを良いことに学生カバンを置いてしまっているため、横にずれて逃げることもできない。

 そもそもなんで他に席もあるのに隣に来たのか。さっき見えた顔を記憶のなかで探してみるが見覚えがない。


「ねえ」


 ビクッと肩が跳ねた。

 恐る恐る視線を上げると彼女は真っ直ぐこちらを見ている。

 さっきまで上がっていた息はもう落ち着いているが、まだ顔は上気していた。

 ぱちりと大きな瞳が印象的だ。とても真剣な表情でこちらを見てるのに、手元の可愛らしいステッキが状況とちぐはぐで違和感がすごい。

 彼女は乱れて顔にかかった長い前髪を耳にかける。


「何でここにいるの?」

「……見ての通り本を読むためですけど」

「それは見れば分かるんだけどさ。もう外に誰もいないよ。避難勧告はとっくに出てるし」

「知ってます。スマホの緊急ブザーが鳴ってたので」


 数十分前までは私以外にも何人かの利用者とカウンターに図書館の職員がいた。

 その場にいた全員のスマホが一斉にけたたましく鳴りだしたのを思い出す。


「じゃあなんで」

「だってどこに避難しろっていうんです?交通機関はもう使い物にならないくらいマヒしてる。頑丈な建物や地下には人が殺到してて入れない。隕石が落ちてくるなんて、どこへ逃げようと被害は免れないじゃないですか」


 食い下がってくるからつい棘のある言い方になってしまう。


「惑星なんちゃら防衛部隊でしたっけ?けっこう前に公表された地球防衛軍みたいなやつ」

「惑星軌道防衛魔化学法少女部隊」

「ああそれです。長すぎて覚えられないんですよ、あれ。まあ、さすがの政府公認の組織も今回はお手上げだったんでしょう」

  

 避難勧告の通知には関東圏に隕石が落下してくるから安全な場所に退避しろというものだった。

 はじめて来た切羽詰まった通知に最初は首をかしげた。

 

 数年前に政府が惑星以下略部隊を公表した。

 いわく、地球に壊滅的被害をもたらす外的要因を排除すべく生まれたものだそうで。

 そんなに頻繁に地球の危機なんぞ訪れるのかと思っていたけれど、意外とその部隊は活躍していたらしい。詳しくは知らないけど。

 その活躍のおかけで隕石やら不明飛来物やらが来たとき政府から通知は来ても、いままで何かしらの被害が出ることはなかった。

 

 だからこそ、避難勧告を告げる緊急ブザーに私を含めた利用者たちはお互いに混乱した様子で顔を見合わせてた。

 それほどに通知の内容は現実味がなかったのだ。

 しかし、朝からパソコンを陣取って延々と動画サイトを見ていた高齢の男性がパニックを絵に描いたように声を上げ始めた。

 PCモニタに映っていたのはニュースのリアルタイム中継で、総理大臣が今まで見たことのないほど深刻な表情で記者会見の壇上に立っていた。

 少し前に大規模な新ウイルスの感染が確認されたときもここまで悲愴な顔はしていなかったと思う。

 ここでやっと「あ、マジなんだ」と妙に冷えた頭で納得した。

 電話回線は既にダウンしていて誰とも連絡は取れず、SNSは言わずもがな大混乱で、憶測や陰謀論が飛び交い地獄の様相だった。


「命は助かるかもしれないじゃん」

「助からないですよ」

「なんで」

「この本、児童向けの書籍ですけどけっこうちゃんとデータとか記録とかが載ってるんです」

「本」


 私の言葉に虚を突かれたのか、彼女の口がポカンと開く。「隕石の?」と力が抜けた声に「隕石の」とオウム返しする。

 見やすいように『宇宙の不思議』と書かれたカラフルな表紙の本を机の上に広げた。子供向けの優しい漢字が使われた文の間を解説役のミニキャラが動き回っている。

 ファンシーなステッキを机の上に放り出し、彼女は本を覗き込んでいる。


「大気圏に突入しても燃え尽きず落下してくるものを隕石って呼ぶんですけど、はるか空の向こうから落ちてくるので落下エネルギーがもたらす被害はかなり大きいそうです。例えばこのロシアで起きたツングースカ大爆発。直径50mの隕石がロシアの上空で爆発した際に東京とほぼ同じ範囲の樹木が爆風でなぎ倒されてるんです。あとかなりの衝撃波が広がって窓ガラスが割れたり地震が起きたり。で、今回落ちてきている隕石は200mなんです。ツングースカの比じゃありません。被害は関東圏から離脱できたとしても避けられず、関東はまあ間違いなく吹き飛びます」

「ヤバいじゃん」

「ヤバいです。ここまでヤバいから惑星なんたらも対応できなかったんでしょうね。いっそ諦めがつきます」

「諦めないでよ」

「そう言われても」


 そっちは避難しないくせに、妙に食い下がってくるなと首をひねる。私が爆発でなぎ倒された木々の写真を指先でつつくのを見て彼女はため息をついている。

 隕石の到達予測は正午。

 時計は11時40分を指している。あと20分もすればこの写真のように何もかもがなぎ倒されるのだろう。

 案外、それも悪くないのかもしれない。

 広げた本を覗き込んでいた女の子が垂れてきた前髪をまた耳にかけた。

 真っ直ぐな視線が私に注がれる。


「でさ、最初の質問に戻るんだけど、何でここにいるの?今日いちおう平日で、ニュースが出る前は普通に学校あったよね?」

「そんなのあなたに関係ないでしょ」

「ああ、ごめん。責めてるんじゃなくて、学校関係者の避難場所に安賀多さんいなかったから」

「……待って、なんで名前を」

「直接会ったことはないけど同級生だよ。宙渡みこ。今月入ってから隣の席でしょ?プリント毎回届けてくれて、ありがとうございます」

「……ああ」


 膝をそろえてぺこりと丁寧に頭を下げた彼女に、引きこもりの、と言いかけた言葉を飲み込む。

 入学してから宙渡みこを見た人はいないと言われるほどに、みんな彼女が登校したところを見たことがない。それでも留年なんかはせず在席し続けている謎多き不登校女子。まさかこんなところで初めて会うとは。

 私が隣の席という情報を把握しているということは、ポストに届けたプリントやらノートのコピーには目を通しているらしい。

 学校とは煩わしい制度を作るのが得意なものらしく、入学から顔を出さない彼女に学校での配布物を渡すのは月一の席替えで彼女の右隣になった人という謎ルールが定着していた。

 来ない人の席なんてわざわざ席替えで移動させなくてもとも思うが先生曰く「いなくてもクラスの一員」らしい。

 なら、いるのに一員にすらなれていない私は幽霊か何かなんだろう。


「別に。ただ真面目に学校行くのが馬鹿らしくなっただけです」

「なんでか聞いてもいい?」

「なんでそんなに聞きたがるの」

「どうせ吹っ飛ぶなら話してスッキリした方が良いかなと」

「そのお得な気分も諸共に吹き飛ぶんですけど」

「なおさらスッキリするでしょ」

「跡形も残らないって意味では、たしかに」


 なんだか彼女のペースに乗せられている気もするが、死ぬ前に全部ぶちまけておくのもいいかもしれない。

 

 自分に何の過失がなくても、ある日から唐突に友達が味方じゃなくなるなんてことはよくある話だ。

 まず最初に挨拶が返されなくなった。よく話していたはずの友達は声をかけるとこちらを見る事もなく席を立つ。

 聞こえていないだけかと腕に触れようとしたらまるで羽虫を払うかのように振り払われた。

 何を言っても反応してくれないくせに、教科書の朗読や先生にあてられた時だけ聞こえるクスクスと耳障りな笑い声が耳の奥にこびりついている。

 最初の方はまだ『飽きればまた前みたいに戻れる』という楽観があった。だけどそのクソみたいな『遊び』は一週間たっても一ヶ月たっても終わらなかった。

 居場所だったはずの教室で、私は透明人間にされたのだ。


 親には言えなかった。共働きで忙しい人に負担をかけたくなかった、というのは建前だ。

 「友達みんなに無視されてるの」なんて言えるわけがない。

 言葉にしたら本当になってしまう。

 必死に見えないフリ、気がついていないフリを続けていた日々を裏切ることになる。

 私は平気だと、強がっていた自分を貶めることになる。

 そんなの受け入れられなかった。

 そうして我慢し続けて何になったのか、結果はいうまでもない。

 日本が吹き飛ぶその瀬戸際までたった一人でいる。

 正確にはもう一人隣にいるけど、気分的には一人ぼっちだ。

 時計を見れば11時45分。長いようで短い。


「色々考えたんですよ、これでも。何か嫌なことしちゃったかなとか、普段の接し方が悪かったのかなとか。でも全然心当たりがなくて、原因を聞こうとしても笑いながら逃げて答えてくれなくて。ああ、これは本当に意味も理由もないやつなんだなって」

「……そんなことになってても学校行ってたんだよね。今日もほんとうはそうだった?」


 彼女が私の制服を指さす。


「朝、いつも通りじゃないと親に気がつかれるかもしれないから。もう昨日の時点で行かないことは決めてたんですけど」

「昨日までは行ってたんだ」

「ちょっと不思議な手紙が心の支えになってたんです」


 ポケットから小さな折り畳まれたメモを取り出す。よれて角が丸まったそれは授業中にこっそり受け渡しするいわゆる『メモ回し』のものだ。

 

 二週間くらい前、たまたま机に入っていたのを見つけた。

 最初は新たな『遊び』が始まったのかと思った。しかし、メモには「学校楽しい?」だとか「なんの部活入ってる?」だとか悪意なんて微塵も感じない質問だけが並んでいた。

 メモを書いた人物の可能性として思い浮かんだのは夜の生徒だ。

 私の通う学校は夜に定時制の授業があり、机の使用が昼と夜で共同だ。

 机の端に見覚えのない落書きがあったり、恐らく定時の生徒のものであろうルーズリーフが置き去りにされてるなんてことも珍しくない。でも、こんなに明確に話し相手を探しているようなものははじめてで、そのときの私も私を無視しない相手を求めていた。

 短い文章をつづったノートの切れ端を小さく折りたたみ机の中に残したのは期待半分。いや、返事が返ってくるとも限らないから期待は半分よりちょっと少なめ。それでもドキドキした。

 意外にも返事はすぐに来た。

 内容はとりとめもないことばかりだった。

 どの教科が好き、放課後どこに行くの、小テストどうだった、そんなことばかり。けど、言葉が返ってくることがたまらなく嬉しくて、そのささやかな文通もどきが好きだった。


「でも、ここ数日ぱったりと手紙は途切れたんです。相手が飽きたのか、定時制に来なくなったのか、私には知る方法はなかった。手元にメモが残ってればまだ良かったんですけど」

「残ってないの」

「これ以外みんな捨てられました。ロッカーのファイルに入れてたのに。掃除係のときゴミ袋をまとめてたらその中に破かれた切れ端があって、もう全部、どうでもいいな、って」


 言葉がつかえた。

 どうでもいい。そう思わないとやってられないじゃないか。

 理不尽ばかり積み重なって、ほんの少しだけ安心できる拠り所は奪われて、いまはさらなる理不尽の塊がすべてを吹き飛ばそうとしている。


「ごめんね」


 滲んだ景色のなかに宙渡さんがぼやけて溶ける。

 どんな顔をしてるのかよく見えない。


「どうせぶっ飛ぶって、あれウソついた」

「……は?」

「言ってスッキリしたら避難してくれるかなって。私はふっ飛ばすつもりないから」

「なに、言って」

「手紙、ほんの思い付きだったんだ。今まで学校ってちゃんと通えたことなくて。そんなほぼいない奴をちゃんと扱えって方が無理あるって分かってるんだけどね。プリントとか届いても結局行ってないから内容分からないまま進級してばっかで。だから、今月になってから届いてたノートのコピー見てびっくりしたんだ。一番下に『いないもの同士よろしく』って書いてあって、投げやりっぽいくせに毎回ポストにはプリント届いてるし。それでなんとかやりとりできないかなって学校に忍び込んで隣の席に手紙入れてた」


 袖で目元を拭い一瞬だけクリアになった視界で宙渡さんが「メモ回しとか憧れてたんだよね」と照れ臭そうに笑う。

  

 なんだそれ。

 つまり私は話の当事者にあれこれ恥ずかしい事情を語って聞かせていたうえに泣き出したということになる。

 恥ずかしすぎて声がしぼむ。鼻水がつまっているせいでうまく喋れない。


「差し出しの、名前とか、書いてよぉ」

「ほんとにごめん。なんかちょっと調子乗ってたというかテンション上がって書きそびれた。もう少しで学校に行けるように調整がつくところだったし、すぐ会えると思って」


 私の目元を拭う宙渡さんの指は温かくて少し固い。荒れ気味な指先のささくれが頬にかすって少しだけピリっとした。

 

「きゅ、急に、返事来なく、なるし。嫌われた、かと思って」

「それもごめん。本当はちゃんと返事書きたかったんだけど、仕事でトチっちゃって、今日の朝ようやく目が覚めたんだ。焦ったよ、避難所に安賀多さんいないからいろんなトコ探し回っちゃった」


 そう言って、宙渡さんは垂れていた前髪をかきあげる。

 そこには額を横切るようについた生々しい傷跡があった。まだかさぶたに成りきれていない縫合の凹凸が残っている。


「本当は今日の隕石ももっと早くに対処できるはずだったんだけどね。私以外も何人か巻き込まれたせいで現場が人員不足で、いま大急ぎでかき集めてるんだって」


 泣きすぎで頭がぼんやりしていて、彼女の話をうまく理解できない。

 軌道修正演算がどうのとか、収束エネルギーがどうとか言ってた気がするが垂れてきた鼻水に気を取られてあんまり覚えていない。


「だから、安賀多さんが避難しないならソッコー片付けてくるから。ひとつだけお願い」

「な"、にを」

「ほら、よくあるでしょ?女の子の戦うアニメとかで応援しながらライト振るやつ。ああいうのって実はすごい重要だったりするんだよね。手紙も力をくれたけど、やっぱり生の声って大事なんだ」

「わ"、たし、ライトとか、も"ってない"」

「そっちじゃなくて、応援の方。『がんばれ』って一言言ってくれるだけで、マジめっちゃ頑張れるよ」


 なんで、そんな自信満々に笑えるの。

 きっと私なんかじゃ想像もできない大変なことにこれから立ち向かうのに、私なんかのために頑張るって言うのか。

 時計は11時55分。

 カバンに入ってたティッシュをひっつかみ、盛大に鼻をかむ。

 応援が鼻水まみれの濁点じゃあんまりだ。

 息を整えて、宙渡さんをまっすぐに見る。

 パチリと大きな意思の強い瞳が寸分もそらされず私を見ている。


「頑張って。それで、ちゃんと帰ってきてください」


 呼吸がつまりそうになる。

 止まるな、ちゃんと伝えろ。


「明日、学校で会うために」


 一瞬、驚きに目を見開いて、それから彼女は見たことないくらい美しく笑った。

 机の上にほったらかしていたステッキを掴み、出口へ駆けていく。


「また明日、学校でね!」


 大きく手を振った彼女が自動ドアを通り抜けた瞬間、姿が変わる。

 セミロングの髪はさらに伸び、色は目映い金色へ。

 可愛らしいフリルのスカートを翻し、金の飾りで縁取られた白いハイヒールが外の景色へ消えていく。

 まばたきの間に非日常は自動ドアの向こうへと消えていき、図書館に再び静寂が戻った。


 避難勧告が解除されたのはその数分後だった。


 数日後、ようやく学校の授業が再開になった。

 一時だけとはいえ大混乱が起きていたのだ。むしろよく数日で日常に復帰できたと思う。

 そして、私は教室のドアの前にいる。

 ここに来なかったのは数日だけ。それでも緊張で押し潰されそうだ。

 いなかったらどうしよう。

 不安はあまりある程ある。あれは私が見た都合のいい夢だったのではないかと。

 でも確かに隕石はそれていき地球は救われた。

 たぶん、彼女のおかげで。


 ぐっと足を踏ん張り、ドアを開けた。


「遅いよ!」

「うひっ!?」


 ドアを開けた真ん前で宙渡みこが待ち構えていた。

 問答無用で腕を掴まれ、席へ連行される。周りは怪訝な顔で私たちを見ているが特になにを言ってくる様子もない。

 窓から二列目、一番後ろが私の席。

 押し込まれる格好で自分の机に座り、彼女も窓に一番近い隣の席に腰かける。

 ずっと空白だった私の左隣の席が、今日はじめてうまった。

 宙渡さんがぴんと姿勢を正し、私を見る。


「あらためまして、惑星軌道防衛魔化学法少女部隊所属、通称魔法少女の宙渡みこです。よろしくね」

「安賀多雪です。よろしく。なんか変な感じ」


 ふふ、と小さく吹き出しながら握手する。

 ふと、握っていた手に違和感を感じて手のひらを見る。

 以前机に入っていたのと同じ、器用に小さく折り畳まれたメモがちょこんと手のひらに乗っていた。


「やっと返事渡せた」


 目の前の魔法少女が満足げに笑った。

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