第四章 告白

第16話 混ざりもの

 突っ込んでくる堕天使に対し、僕は力を両足に込め天井へ勢いよく跳躍する。


 「逃がさないわよ」


 堕天使は天井へ腕を上げるとそこから緑色の植物のツルを伸ばす。

 ツルが僕へ向け伸びる。天井を蹴り別の壁に移るも限りが無いのか?ツルは容赦なく逃げる僕を追いかける。


 「おや、おや、どうしたんだい?逃げてばっかりじゃあたしは殺せないよ」


 防戦一方の僕に微笑む堕天使。そんなやつの顔を目で捉えるも背後でツルが色々な物を破壊しながら迫ってくる音が聞こえている。

 このまま逃げ続けたんじゃ埒が開かない。どうする?と言っても何か鋭利な物があれば……


 「ほら、追加でもう一本!」


 打開策を考える僕の行く先に堕天使のもう一本の腕から二つ目のツルが伸びてきた。


 やばい!?


 向かってくるツルに僕は空中でしゃがむ姿勢をとり、胸の前で両腕を交差させ防御体勢に写しつつその言葉を叫ぶ。


 「カウント13」


 その言葉に反応し、僕の身体は重くなり床へと一気に急降下した。

 この動きには堕天使のツルもさすがに反応出来なかったのか?二本のツルはその速度のまま壁に激突した。

 急降下する僕の頭上に破損した壁の瓦礫が降り注ぐ。幸いにもそこまで大きな瓦礫は無かったため、当たってもそこまで痛くはない。

 降り注ぐ瓦礫の中から僕はあるモノを見つけた。


 「挟み撃ち出来たと思ったんだけな〜。でもその瓦礫からすぐには動けないよね」


 瓦礫が起こした土煙で周囲が見えない状況の中、堕天使の声が聞こえたと思えば天井からあの迫りくる音がする。

 確かにやつの言う通り瓦礫や崩れた床の段差ですぐには動けない。けど降ってきたこれがあれば。

 僕の手には数枚の硝子の破片が握られていた。


 「カウント9」


 その呼びかけに数枚の硝子が光輝く。僕はそれらをツルが来る天井へ向かって投げた。

 投げられた硝子はそれぞれ徐々に姿を変え、やがて騎士のような姿へと変貌した。

 そして硝子の騎士たちは土煙の中から次々に姿を現すと二本のツルを目にも止まらぬ速さで切り刻んでいく。

 切り刻まれたツルは四散し、硝子の騎士が僕の周囲に配置する。

 硝子の騎士が腕と一体になっている剣で舞っている土煙を切り払う。

 視界を取り戻した僕の前では堕天使が自身んp腕の中へツルを回収していた。


 「爆発的な力、高速移動、物理法則無視の急降下、そしてその硝子の兵隊。混ざりに混ざってるのね。想像以上だわ。けど……その分、消耗も激しいみたいね」


 冷静にこちらを分析したかと思えば、まだ自分が有利と言うように堕天使は口角を上げる。

 実際、やつの言う通りだ。

 呼吸は一定に保ってはいるが、力の連続使用で正直キツイ。

 集中。もしくは意識が途切れたら硝子の騎士たちも元の破片に戻ってしまう。ただでさえ周囲の炎の影響を受け易いって言うのに。


 「心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと殺しますから」


 「あらそう。……ほんと、生意気ね」


 堕天使の返答を引き金に僕とやつが同時に動きだす。

 飛行する堕天使を真正面に迎え打つ。

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