第13話 再会
松明で周囲を照らし教会内の構造を把握する。
ザッと見た感じ、左右にそれぞれ別の部屋へ繋がる扉が一つずつと正面には二階へ続く階段が弧を描くようにしてあった。
教会と聞いていたので祈り場と長椅子が並んでるものだと思っていたが、予想に反した内装に驚いている。
とりあえず順番に見ていくか。そう思いつつ教会内に転がる瓦礫や落ち葉を踏みつけ、まずは左の扉から手をつけていく。しかし数分後、何事も無く僕は左の扉から出てきた。
左側にあったのは洗面台に風呂・お手洗だった。古いからか?それぞれ蛇口を捻っても水は一向に流れてこなかった。風呂のカーテンが締め切っていて、開けるのに少し怖かったが特に何も。その時は思わず安堵の息を零した。
再び一階の広場に戻ってきた。
もう一度、周囲を松明で照らすも特に変化は無かった。
思わずだが、音は立ててしまっている。それなのに例の堕天使は姿を見せない。
今日はいないのか?それとも場所を間違えたか?
変化の見えない現状に疑いながらも僕は反対側にある右の扉へと足を進める。
扉を開け中へ入ると、手前から奥に伸びる長いテーブルが一つとその両脇を幾つも椅子が連なっていた。
見覚えのある家具の配置にこの部屋が何なのか?僕は一眼で理解した。
食堂
王室や施設など多くの人が過ごす建物に備えらている部屋の一つだ。
数時間前、僕が食事を取った施設の食堂の間取りも似たような感じだ。
テーブルに視線を預けながら部屋の奥へと進んでいく。
徐々に見えてくる真っ暗なテーブルの先。その奥の席にはスプーンとナイフが一本ずつ、そして僅かに水滴の残った深皿が置かれていた。
僕はそれらに松明を近づけた。
教会や食堂内の荒れ具合に反して食器は綺麗なほうだった。
スプーンや皿に触れてみたが少し温かい。状態から察するに時間はそんなに経っていない。
やっぱり、ここにアイツが……
そう確信した時、何かが聞こえた気がした。
ふと顔を上げると視線の先には、テーブルの向こう側にある部屋?に繋がる扉があった。
ゆっくりと扉の前へと行き、ドアノブに触れ息を飲む。
食堂から続く部屋に入るとそこはフライパンや鍋などが乱雑に転がっている調理場だった。
調理台は使われたものが散乱しているにも関わらず、作業スペースなのか?ある一角だけは綺麗に保たれていた。
そしてそこには一本の何かが置かれていた。
どうしてか?それが気になった僕はその場所へと近づく。
近づくにつれ、また声が聞こえた気がする。けどそれが気になる僕の足は止まらない。
一歩一歩近づくにつれ、その声は段々と言語として認識してくる。そして……
…… ……
それが確かに聞こえた時に僕は思った。
「来ないで……」
この部屋に入らなければ良かったと。
いないと分かったならすぐに二階の捜索を始めれば良かったと。
手に持つ松明の明かりがそのスペースを照らす。そして照らされたそれが僕の眼に映る。
「あ、」
折れた茎。破れた葉。バラバラに引き裂かれた白い花びら。
「ああああ、」
毎日見つめた綺麗な姿の影はそこに無く。ただ目を背けたいほどにボロボロな姿の花がそこに寝ていた。
そうだ。作業台のそのスペースに僕が探していたあの白い花がいたのだ。
そしてその光景に僕は、
「うわあああああああああああああ」
ただ叫ぶ声をあげるだけだった。
同時に部屋の入口に立つ気配を僕は感じ取っていた。
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