第12話 教会

 この世界は、赤・青・白・黒の四つのエリアとそれらの中央にある神のエリアで構成されている。

 神のエリアは選ばれた天使や戦乙女しか立ち入ることが許されていない。

 施設のあった青エリアから教会のある赤エリアまでは中央を通れれば直線で行けるが、虚である僕にそれは許されていない。

 アンブレラの速度を上げ、南に位置する黒エリアの宇宙そらを経由して赤エリアへと急いだ。


 目的の赤エリアへ入って暫く、僕はアンブレラから周囲を見下ろし教会らしき建物を探した。しかし真っ暗な街中で、この時間。明かりのついている建物は少なく、当番であろう数羽の戦乙女たちがパトロールを行っている。

 自分の持つ力のおかげで宇宙そらの色と同化できているからか。幸いにもまだ僕らの存在はバレていない。

 バレても注意を受けるだけ。もしくは施設に戻されることになる。

 命の危険は無いけど、面倒ではあるしバレちゃいけないのには変わらない。

 とりあえず赤エリアを一周しよう。外れって言ってたし、外縁をなぞるように周れば見つかるかもしれない。

 そう考えた僕は彼女たちにバレないよう注意を払いながらアンブレラを羽ばたかせた。


 赤エリア外縁をなぞっていると、他のエリアに面さない一角が木々で覆われているのを発見した。その木々の隙間から自然物ではない物が見えた僕は、アンブレラをそれの近くに降ろすことに。


 木々の近くに降り立つと、そこはちょうど入口付近であり壊れかけの門らしき物が見えた。

 アンブレラから降り、門らしき物の下へ行く。

 門は鎖で繋がれていたが片方が崩れかけており、向こう側を覗くと木々の隙間に教会らしき建物が見えた。

 振り返り一度周囲を見渡したが、天使や虚の気配はおろか戦乙女たちの姿も無かった。


 禁止区域…… パトロール範囲外……


 そんな単語が脳裏を過ぎる。

 門の側の壁には建物の名前を彫んだプレートが付けられていた。

 プレートは埃や土を被っており、それらを払っても古すぎるせいか?僅かに教会と読めるほどの状態だった。

 それを確認した僕はもう一度、奥に見える建物に視線を向け力を行使する。

 何がいるのかは分からなかった。けど、良くないものと言えばいいのか?建物の中から何かの気配を感じ取った。


 恐らくここだろう。


 そう判断した僕は両手で門に掛かっている鎖を掴み、力を込めそれを引きちぎった。所々錆びていたので、鎖は割と簡単に切れてくれた。


 「アンブレラはここで待ってて、」


 アンブレラにそう言い残し、僕は木々で覆われたその敷地内へ足を踏み入れる。

 幾つもの枝や葉を掻き分け進んで行くと、やがて大きな建物が見えてきた。


 教会だ


 高さからして二、三階くらいか。天井近くの時計は止まっており、その近くの窓硝子は砕かれている。

 塗装のはげ具合や外装の損傷は酷いが、それでも教会の原型は留めている。

 僕は教会へと近づき、少し躊躇いながらも扉の取手を掴んだ。

 引くと扉には鍵が掛かっておらず、力のままゆっくりと開けることが出来た。

 扉の向こう側には、明かり一つ無い真っ暗な空間が広がっていた。

 僕は足下に転がっていた枯れ枝を纏めそれに火をつけ、教会内へ足を踏み入れた。

 松明によって小さく照らされた辺りを頼りに例の堕天使の捜索を始める。

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