第7話 手掛かり0
青エリア『十字街』
昨日、花屋『一本道』であの白い花を買ったという例の堕天使を探すため、施設を出た僕は真っ先に向かった場所。中央から上下左右に伸びる十字路を基準に施設や店が軒を連ねている。それらの施設を利用しようと毎日数多くの天使や虚が行き交う青エリア一番の街だ。
街に到着して早速、僕は行き交う天使の方々に聞き込みを開始した。しかし…
「はぁ~」
公園のベンチに一人腰を落としながら見上げた宇宙へ向け、ため息が吹かれる。
聞き込みを行った結果、例の堕天使に関する情報は…ゼロ。頭に引っかかるほどのモノすら一つも無かった。
天使以外にパトロール中の戦乙女の方々にも聞き込みをしたが、そんな天使の波長は感じていないし、僕の云う情報に該当する天使も見ていないという。戦乙女の方々曰く、昨日は特に目立った事件も発生していないそうだ。
不確定な
「手がかり無し。…どうすれば良いのか?」
手詰まりな状況に思わず情けない声が出る。そんな時⁉
ビュー‼
この公園を含めた十字街全体に強い風が吹き抜ける。その風は凄まじい勢いで僕自身もベンチの上で身体を丸めて防御姿勢を取るほどのものだった。
「ふぅ~ビックリした」
急に吹き抜けた風の勢いが徐々に収まっていくのを肌で感じ僕は、ベンチの上で構えていた防御姿勢を解いた。姿勢を元に戻したことで、視界には公園の景色が再び広がっていく。少し葉っぱが舞っているが、それほど変わりは無かった。
「何か…お困りかな。虚の少年」
突如、聞こえてきたその声に僕の眼が見開く。声が聞こえてきたほうに視線を動かすと、僕が座るベンチの隣で一人がゆったりと腰を落としていた。
ベンチに座っているその存在に危機感を感じた僕は、そいつへ向けている視線を保ったまますぐさまベンチから離れた。
足を組みベンチに座るそいつ。黒い服でその身を包んでおり、頭から深く被っている黒い帽子によって、その顔はハッキリと分からない。
こいつが…堕天使⁉
昨日、ランチさんから聞いたばかりだから堕天使を見たことは当然無い。けど僕が持ってる情報とそいつの姿は似てる。
目的の存在が目の前にいるという緊張感と恐怖感に全身を支配されつつ僕は、そいつに声を掛けた。
「あんた…堕天使なのか?」
顔は見えないが、僕の言葉に反応を見せるようそいつの口元が僅かに動く。
「堕天使…じゃ無いんだな~、これが」
そいつは冷静に喋り出したかと思えば、すぐにその冷静さは無くなり、ガッカリしたように反応を見せる。
「俺は堕天使では無いし、天使でも無い。だからと言って虚という訳でも無い」
そいつは片手を上げ、人差し指を左右に振りながら続けて答える。
堕天使じゃない。それに天使や虚でも無いなんて…
目の前にいるそいつの予想外の回答に僕の頭の中は、じゃあ、何者なんだ?という疑問が生まれる。
「そんなに警戒すんな、君が言いたい事は分かる。とりあえず座んな、俺は君の敵じゃない」
警戒し続ける僕にそいつは自分が座るベンチの空いた隣を優しく叩いた。暫し躊躇いつつも僕は警戒心を解かず、そいつの隣に、先ほどまで自分が座っていたそのベンチに腰を掛け直すことにした。
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