第2話 目覚めからの誘拐

「……んん、っ」


 私は目を覚めると、そこは裕福な少女の部屋と言った印象を湧く部屋だった。

 青をイメージカラーとして構築されたこの部屋は、少女の愛嬌さや可愛らしさがにじみ出ているぬいぐるみや、写真、本などがたくさん眠っている。


「……転生術は、とりあえず成功のようね」


 私は自分の小さな手をぎゅっと握ったり手を離したりして、今の自分の生を実感する。ふぅ、と小さい溜息を吐きながら彼女は一度目を閉じる。


「――――とにをかくにも、どんな時でも情報が物を言うわ」


 私は鏡に映る自分の姿を見つめるために小綺麗な化粧棚の鏡を見ることにした。ベットから起き上がって、私は軽く歩き出す。

 妙も体が軽いというか、視界が少し低い気がするが……まさか、な。


「……子供じゃない」


 まあ、慌てていたから年齢の設定まではできなかったのが裏目に出たか。

 私は鏡を覗き込むと、そこには可憐な少女が目の前に実在していた。

 役者の娘としても、顔がいい。顔がよすぎる。

 この少女の両親は相当の美形美女なのでは……? と、疑いたくなるほどである。


「……大人になったら化けるわね、この子」


 私は再度鏡を見ながら自分の容姿を再度確認する。

 新たに転生した少女の顔面国宝っぷりには驚かされる。流れる柔らかい銀髪に彼女の髪に合うようにハーフアップされた髪に大きめな白いリボンがつけられている。澄んだ空色の瞳に人形のごとく整えられた造形美を思わせる美顔。

 いや、手足や体に至るすべての部分に置いて、高評価してもいいんじゃないだろうかこれは。襟元にレースが入った白いシャツと、彼女の瞳と似せたスカートの組み合わせと足首までのソックスについても、彼女の育ちの良さを際立たせている。

 

「……いい所のお嬢様、ってところね」


 私はスカートの裾を掴みながら軽く自分の容姿を再確認する。

 幼女の顔面や他の体の部位を見ながら観察した。目の前に映っている人物が女性、嫌、幼女という点についてはまだ転生した身としては考慮できる。

 私はスカートから指を離すと、一度目を閉じてから思いっきり息を吐く。

 ……空気中のマナは極限までに薄いようだけど、魔女であった私が魔法を使用できないわけじゃない、か。

 この子の情報を調べるために、私は空気に薄れたマナをかき集めようとすると部屋のガラスが割れる音が響く。


「な、何!?」


 私は振り返ると、窓が壊されて謎の男が室内に現れる。


「――――見つけたぜ、お嬢様!」


 窓の破片が舞う中、黒のローブを纏った男が乱入してくる。

 誰だ、この男。

 お嬢様、って……たぶん私のこと?


「あ、貴方はだれ――――きゃあ!?」

「大人しくしろ!」

「誰かぁああああああ!! 助けてぇええええええええええ!!」


 私はローブ男に担がれ、全力で叫ぶ。

 壊された窓から男は飛び降りると私の頭に紙袋をかぶされて視界が見えない中、誘拐される。


 ――転生していきなり誘拐って、ついてないわ!!

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