episode3.「D-Day - (Departure day )」 (2)

彼女の家までは、走って30分と言った所だろう。

銃だけで優に3キロを超える装備を持って走るのは夏前、まだ涼しい時期だとしても音を立てて体力を削っていく。


ふと目に止まったガソリンスタンドに立ち寄ることにしたのは、水分を摂るために避難するためであり、決して甘いものを探そうとした訳では無い。


暗い店内を、入口の自動ドア越しに眺める。なにか動くものがないか、じっくりと銃を構え観察した。

さて、店内に入ろうとしたとき、自動ドア含めどの機器にも電気が通ってないことに気づいた。


銃でガラスを割って入るのは簡単だが、どこか申し訳なく思い、自動ドアの隙間に指を突っ込んで無理やりこじ開けた。


軋む音が店内に響き渡る。

ところどころ風化しているが、外のように急激な劣化をしてるようにはみえない。

ハンドガンをしっかり握りライトを付けた。


何個かスナックを頂いたところで、問題はそれよりもはるかに大きいと見た私はスナックを何袋か、ミネラルウォーターを引っ掴んだ。


水は透明度があり、封を開けて匂いを嗅ぐとなんの匂いもしなくどうやら飲めるようだが、念の為浄水キットを取り付けた。


ペットボトルの蓋のように回転させて保持させるストローのような器具で、飲む時にろ過してくれる非常に便利な道具で、私たちにとって必須だ。


スナックを開けて食べようとした時、私の視界外で物音が聞こえた。

スナックの袋を投げ捨て誰だ!と大声で威嚇する。


「お前こそ誰だ!」


姿こそ見えないものの、強いライトの光を目に受け、思わず細める。

こちらもライトの方向にハンドガンを向け、ライトの光を当てる。


「私はRCoSのclever、お前は何者だ!」

「RCoS?俺は警察のスティーブだ、IDを見せろ!」

「そっちこそ警察ならIDを見せろ。」


どちらかが少しでも動く様子を見せたら撃つ、そんな雰囲気が続く。

そこで私はひとつ提案をした。

3カウントでお互いにIDを見せ合う。

出さなかったら問答無用で撃つというやり方だ。


「いいか、左手でIDを抜くぞ。」


「私も左手でIDを抜くわ。変な動きをしたら殺す。」



3、2、1、


ライトを少し下げ相手のIDを確認する。

確かに警察のIDだったが、認証番号などを確認する方法が無いためあまり効力はない。 しかしこんな普通ではない時にIDを偽造なんて馬鹿なことはしないだろうと、少し警戒を弛めた。

勿論銃はお互い向けたままだった。

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