episode2.「QC(Quality Control) 」(2)
幸いにも自分の家はほとんど問題はなかった。
鍵を使って扉を開けると直ぐに靴のままリビングまで走る。
決められた床板を押し込むと、壁際の棚が動き、そこに階段が現れる。
まるでSFのようだが、もう既に実現されてる技術である。
下へ続く階段をおりるとそこは装備置場になっており、またキルハウス(訓練施設)にもなっている。
制服を脱ぎ、装備を着る。
肌寒くなってきた時期だ。
風通しがよく、しっかりとした生地のマウンテンパーカーに、固く破れにくいジーンズは、見た目とともに機能性も高い。
タクティカルベルトをしっかりはめる。引っ張って外れないことを確認したあと、ソフトアーマーを着て、その上からチェストリグを着込んだ。
分厚いように感じるが、身を守るためには必需品である。
マガジンに弾を込めてチェストリグにしまい込んでいく。
4つしか入れられないが、それ以上持ち運ぶと邪魔になってしまう。
ハンドガンのマガジンにも弾を込める。
指で押し、1発1発滑り込ませるようにして充填させていく。
1発少なくしておくとマガジンの疲労が少なく、長く使えるのと、テンションがかかりすぎてジャムを起こすのを抑えることが出来る。
3本リロードしたマガジンを用意して、ベルトのマグポーチに2本差し込んだ。
ガンロッカーからアサルトライフルを取りだし、トリガーセーフティーを取り外す。
マガジンを入れる前にチャンバーに1発入れ閉鎖させると、フォワードアシストノブ(チャンバーを閉鎖する手伝いをするノブ)を2、3回叩いて完全にエジェクションポート(排莢口のこと。空薬莢が飛び出すところ。)を閉鎖する。
マガジンを叩き込み、スリングを肩にかけた。
ハンドガンも取りだし、チャンバーに1発弾を込めてリリースし、マガジンを叩き込んでセーフティをかけ腰のホルスターにおさめた。
ガスマスクを首にかけ、帽子をかぶった。
イヤーマフを被り靴もミリタリーブーツに履き替え、しっかり紐を締め、ブーツナイフを引っ掛けた。
まるまる装備を入れたリュックをロッカーから引きずり出し、リュックに引っ掛けてある内容物のメモに一通り目を通し、問題ないか確かめた。毎日のように確認しているが、繰り返しするのが大切だ。
そこでようやく気付くのだ。自分以外のロッカーが空であるということに。
こうやって装備を出したのは、やはりあの出来事の後だからなのだろう。
自身の所属しているPMCが自分になんの話もなく勝手な動きをしている。
自分が長年過し、家族も同然の会社が、なぜ断りもなく作戦を実行したのか…そして何より
「人の彼女、良くも攫ってくれたな。」
私の怒りはかなり私的な要因で構成されているようだ。
「code clever、行動を開始しました。装備の調達かと思われます。」
キーボードを叩く音は室内に響きわたり、それは少数ではない。
「引き続き見張れ。」
「了解。KIA(作戦中に死亡)にしておきますか?」
「いや、MIA(作戦中に行方不明)だ。」
「了解しました。」
その会話の後、cleverと書かれた書類に、MIAという判が押されたのだった。
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