episode2.「QC(Quality Control) 」


私は目を醒ました。


とはいえ直ぐに体を起こす訳ではなく、体をピクリとも動かさずに周りの気配を探る。

もっとも警戒すべきは音である。

衣擦れだけではなく、石が何かと接触して鳴る音、そして独特な銃の音。

鉄が当たる音は自然界に存在しない。

また、煙草やガンオイルの匂いや、体臭を探る。鉄と火薬はよく目立つ。


そうしてたっぷり3分待つ。

そして近くにそういったぽかをやらかすやつが居ないことがわかると、薄ら目を開けるのだ。


近くにある遮蔽物を探す。

目の前2mに壁があるのを確認すると、体を思い切り捻り壁に近づいてすぐさま壁を乗り越えて姿を隠した。

そして30秒待つ。

音がしないことを確認してようやく、体を自由に動かすことが出来るのだ。


体についた砂を軽くはらい、外傷を確認しながら自分の家へ走りはじめた。

足は折れてないし、どこからも出血してない。

鈍痛すらないことから外的要因で気絶したわけじゃないことが分かった。


しかし周りを見れば、煤汚れに崩れた家、そもそも基礎から無くなっているものや、名称し難い何かがべっとりと着いた家がある。

それはまるでナメクジのような軟体生物が這いずり回ったようだが、大きさは家を飲み込むようなものだ。

理解するのも烏滸がましく、体は拒絶してるのを感じ考えるのを辞めて家へ走った。

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