not公募勢という選択
公募勢やワナビーと呼ばれる、書籍化や入賞を目標として執筆に励む人たちの一方で、公募に一切出さず、書籍化などにはあまり興味はないと言う方も多くいます。
公募勢の対義語なら、趣味勢と言ったところでしょうか?
特に、呼び名はないようですが、仮にここでは『趣味勢』としておきます。
ただし『趣味』と言っても、ゆるく書いているお気楽な書き手という意味ではなく、公募には出していないという意味の簡単なカテゴライズだということでご理解ください。
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趣味勢の人の目的は、あくまで書くことが楽しい。
書くことで広がる交流が楽しい。
他人からの厳しい批評は必要ない。
好みが似ているもの同士で楽しくやりたい。
そういう感じだと思います。
公募勢と呼ばれる人たちも、最初は趣味勢だった人が多いですから、気持ちはよくわかるかと思います。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは趣味勢が進化したものが公募勢なのか? というところです。
そうだとも言えるし、違うとも言えるからです。
確かに、公募勢の多くは趣味勢から進化した人たちです。
ただし、趣味勢の人が公募勢に進化
あえて公募勢にならずに、趣味勢としてとどまっている『not公募勢』という有力者も多くいるからです。
そういう方は、別に公募を否定しているわけではなく、競うことや賞に選ばれることにあまり興味がない、無欲でマイペースな方がほとんどです。
かといって、執筆に妥協をしているわけではなく、常に一定のクオリティで自分の味をかもし出している方が多く見受けられます。
私がホームページをやっていた時代からの知り合いには、そういう方がいます。
投稿サイトで発表した方がたくさん読まれるのに、公募に出しても絶対良いところまで行くのにどうして出さないのだろう? と思うこともあります。
ただ、私も自分のホームページをやっていたこともあるので分かるのですが、ホームページはすべて自分好みにカスタマイズできる究極の趣味の場所なんですよね。
デザインも壁紙もフォントも自分で選べる。
ちょっとHTMLを調べれば、花びらを散らしたり文字をタイプライターみたいに出力したり、いろいろな細工もできる。
私も自分のホームページを持っていたころは、小説サイトだと言うのに音楽が流れるように作ったこともありました。(笑)
公開する小説に限らず、ホームページ全体を作者の世界感で彩ることができるのも楽しかったりします。
また、作品を投稿サイトに載せずに自分のホームページだけで公開することは、とても自作に愛着のある行為とも言えます。
投稿サイトはデザインこそ選べませんが、更新も楽ですし大変便利です。
個人ホームページに比べると、更新する作者の出入りがあり、また確実にたくさんの作品と出会えるのでWEB小説を求める読者のポータルサイトとしても人気があります。
ただ、そのデータの管理は個人のID、パスがあると言っても、何らかのトラブルで投稿サイトの管理者が制限をかけてしまったら、簡単に喪失、あるいは削除ができなくなると言う欠点もあります。
一方、個人のホームページはサーバーの故障などなければ、上げるのも下げるのも自分の裁量でできます。
個人のホームページを長く続けている方は、デザイン性の他に、自分の大切な作品が自分の手の届かない状態になることを懸念して居を移さない方もいます。
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趣味勢の方は、積極的に同人誌活動をしているというのも聞きます。
文フリやコミティアに参加して、紙媒体で作品を発表し、読者や他の創作者と対面で交流することを楽しんでいたりします。
ここで結構重要なのが、紙媒体というところです。
これはプリンターやコンビニのコピー機でも作れますが、印刷所に発注する人がほとんどです。
そうなると、原稿も自分でデザインしなければいけない。
しかも、印刷してしまったら簡単には誤字も直せないですし、校正も何度もする。
結果的に、クオリティの高い物が出来たりします。
私は、あまり創作系のイベントに参加したことはないのですが、そこで買った本に感動したことがあります。
和綴じのお手製の丁寧な装丁で、中身も素晴らしい短編小説だったんです。
その方は、今も趣味勢でがんばっています。
イベントに精力的に参加して創作活動を楽しんでいる姿は、私にはとてもキラキラと輝いて見えます。
また、Twitter(X)で折本を配布している方で、デザインも内容も素晴らしい方もいたりします。
毎日140字小説を投稿している、私の140字小説の師匠も自分のホームページを持っていて、そこで長らく短編小説などを公開しています。
私の知る趣味勢の人は、みなさん独自の色を持っていて、作品のクオリティもとても高い方ばかりです。
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何が言いたかったかというと、公募勢と趣味勢を比べたときに、ガンガン書いて投稿している公募勢の方が物量をこなしているし、レーベルや賞の要望を意識して書いているから優れている、エライと思っている方がTwitter(X)などを見ているといるようなのですが、それは勘違いだと言うこと。
not公募勢の作家さんが自分のペースで書いている小説にも、とても心を打ついい物があるのです。
当たり前のことなのですが、受賞や書籍化をしなくても、すばらしい小説を書く人はたくさんいます。
それは公募勢に限らず、趣味勢にも言えること。
WEBでそういう無冠の良作に出会うと、作品の評価を決めるのは賞の選者ではなく、読者である私達なんだと思います。
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