人と比べるなっていわれても(後編)
私は、人と比べて、競い合って痛い思いをしたことがあります。
以前、創作系の掲示板に出入りしていた時期のことです。
そのとき、私の小説を『三行で読む気が失せた』とか『こんな設定ありえない』など、酷評した男性がいました。
今思えば、女性で公募に出しているとか言うと叩かれやすい時代だったのかもしれません。
そこまで気が回らなかった私は簡単には受け流せずに、とても悔しい気持ちになりました。
相手は公募に出しているとは言っていましたが、その小説はネット上には公開はしていなく、どのくらいの力量の人かも分かりません。
相手の小説が読めて、私よりもいい物を書いていると納得出来たら、その言葉も甘んじて受けたかもしれません。
けれど、そうではなかったため私の溜飲は下がりませんでした。
そのとき、某少年誌の短編小説の公募があり、それにみんなで参加しようという話になりました。
少年誌は念頭になかったのですが、私のことをけなした男性は、その賞に応募すると言いました。
これはもう私の意地です。
同じ賞に出して、その人より上に行くしかないと思いました。
『飛行機』というお題が決まっていたので、そのテーマに沿って書くにあたって、色々調べました。
エアレースの動画を見たり、実際に飛行機を見に行ったり、運良く気球にも乗せてもらいました。
正直、小さなプライドのために始めたことではありましたが、色々な体験ができたおかけで、途中からそんなことも忘れてとても楽しく書くことができました。
自分でも納得のいくとても良い小説ができ、自信と期待をもって投函しました。
結果、私のことを馬鹿にした男性はその賞で1次を通過し、私は1次も通過できませんでした。
現実に『ざまぁ』はありませんでした。
そこには、純粋な力比べで負けたという事実しか残りません。
ただただ、虚しい気持ちになりました。
私の書いたものが、その人より劣っていたかどうかは、私は相手の小説を読んでいないので判断することもできません。
しかし、第三者が読んで、私は落とされ、彼の小説は選ばれた。それが事実なのです。
人と比べるということは、そういうことです。
勝った負けたと比べると、負けたときには傷跡しか残りません。
だから、人とは比べない方がいい。
『カテゴエラーだったんだから仕方ない』『いい話だったし落ち込まないで』と、励ましてくれる人はいました。
慰めの言葉はありがたかったですが、自分でつけてしまった傷は深く、なかなかふさがりません。
『カテエラ』便利な言葉です。
少年誌の公募に、少女小説的なものを出したのは私の失策です。
けれど、私は少なくともその話は最大限少年向きを意識して書いたのです。
勝手に勝負意識を燃やしたのも、第三者から見ればカテゴエラーの小説も書いたのも全部、私の責任です。
私の筆力がないことが招いた結果です。
*
では、残された私のその小説は本当に評価に値しない無価値なものなのか?
他人ではなく、私自身を軸として見直すと、その小説はとても意味のあるものに思えました。
内容はパイロットの少年の成長と切ない恋のお話。
それを書くのに十分に情報を集め、現地取材をし、そして、自分で体験もした。
レーベルの求めているものを考え、それに寄せて書くのも初めてでしたし、書くために新たな経験をし、それを反映させてみることも初めてでした。
出来栄えは、自分の中で納得のいく仕上がりです。
その小説は、他人の評価に関係なく、私を成長させてくれた特別なものです。
そう気づいたときに、それを、単に他人と比べて、負けたという事実で汚してしまってはもったいない気がしました。
そこから、人と比べること、競うことはあまりしなくなりました。
同じ公募に出せば、選ばれる選ばれないが明確に分かるので、どうしても比べることになってしまいますがそれは避けては通れないこと。
同じ公募でなくても、他者の成功は妬ましい気持ちをかき立てるでしょう。
それは、自然発生するものなのでしかたない。
比べたくなる気持ち、嫉妬したくなる気持ちは、それはそれとして認め脇に置く、箱にしまうなどして長く向き合わないようにしています。
気持ちが黒く塗りつぶされそうなときは、そうやって、過去の自分と比べて出来が良かったかどうか、全力を出せたのか、成長できたか、そういうことに注目して自分軸で考えてくことをお勧めします。
*
PVや☆もそうです。他人と比べないで、1か月前の自分や一年前の自分と比べてみる。
カクヨムで言えば、私はカクヨム歴6年目の昨年、15日連続で更新したのに0PVでした。
登録してから、カクヨムから離れていた空白の時期があったとはいえひどい有様です。
せっかく、カクヨムでもがんばってみようと! 読んでもらえることを期待して15日も連続で更新したのに、0PVとは筆を折るのに十分なダメージです。
それでも、色々な人に教えを請い、工夫を重ねた結果、この一年ちょっとで月の合計で500PVの時もあり、☆が200近い作品もできました。
地味な積み重ねですし、上を見ればこのくらいの数値は鼻で笑われそうな気もしますが、自分軸で見ればほぼゼロからのこの数値は、すごい成長です。
人と比べないで自分軸で考えるということは、自分の成長を見つけて喜ぶ、そういうことです。
負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれませんが、遠吠え結構。
他人は関係ない。自分が楽しく書き、書き続けることが一番大切なのです。
それが本当の『よそはよそ、うちはうち』と言うことではないでしょうか?
『うちはうち』で楽しくやっている人が、最強の勝ち組なのです。
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