第2話 2度目の出会い

 今日も小枝は、アルバイトの帰りに、みなとみらいの図書館に寄った。


 いつも使っている自習スペースの机には、昨日買ったファイナンシャルプランナーのテキストが広げられていた。


 小枝は、ファイナンシャルプランナーになりたいわけではない。

 近い将来就くであろう職業に、少しでも役立てば、という思いがあったからである。


 閉館のアナウンスがかかり、小枝は顔を上げた。


 外は真っ暗だ。


 テキストやルーズリーフをトートバッグに入れ、小枝は立ち上がった。


 キャスケットを被り、図書館を出る。


 ひんやりした空気。


 横浜駅まで、歩こうと思った。

 距離はあるが、散歩が好きな小枝にとって、それほど長い距離ではない。

 信号が多いのが、面倒ではあるけれど。


 ふいに、風が吹いた。


「あっ」


 小枝の帽子を、冷たくなりきれない風が吹き飛ぼした。


   ***


 その帽子を拾ったのは、亮平だった。


「ありがとうございます」


 小枝は走って、亮平から帽子を受け取った。


 2人は、お互いの名前を知らない。


 でも、昨日本屋で会ったこと。


 その時の光景が鮮烈に、心に蘇った。


 小枝は戸惑い、変な顔になった。

 亮平も、驚いた顔をしていた。


 2人は思わず笑ってしまう。


「じゃ」


 亮平は手を振った。

 小枝も同じように返す。


「じゃ」


   ***


「それ、運命じゃない?」


 中学時代からの親友である、由美が言った。


 近所のファミレスで、1ヶ月ぶりに、小枝は由美と食事をしていた。


「そうかなぁ?」


 小枝が言う。

 大きくうなずきながら、由美が身を乗り出す。


「そうだよ! 運命だって!」


 小枝の表情は暗い。


 2日連続で同じ人に会った。

 どうしても、その人のことが頭から離れない。


 これがなにを意味するか、誰もが察しがつく。


 由美が顔をしかめた。


「もしかして、まだ、いろいろと引きずってんの?」


「そうじゃないけど…」


「そんなんじゃ、いつまで経っても次に進めないわよ!」


「そうだけどさ…」


「もしかしたら、またどこかで会ったりして」


 小枝は笑った。


「まさか〜」


「そしたらさ、連絡先交換しな」


 小枝は由美と、面白半分で約束した。

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