第27話 紙一重ノ嘘
そして次の日。
美華は安静の為、学校を休んだ。
もうこれ以上彼女を苦しめたくない。
こんなにもズタボロになっていても、今日も私と一緒に学校に行くと言ってくれていた。
だけど、圭が言った。
「美華さん。本当に今までよく頑張った。もう安心して。僕が唯愛を守ってみせるから」
そう言い彼女を納得させた。
私も学校へ1人で行くのは本当に久しぶりだったが、歯を食いしばり気合いをいれた。
ここはさすがに彼と一緒に行くわけにはいかない。
気合をいれなきゃ。
うん。
私には圭がいる。
そして美華も。
大丈夫。
大丈夫。
そう思いながら学校へ行った。
そして、私が教室に入ると、クラスの皆が美華がいないことに気づく。
女子生徒A「あれ~?今日美華いないの?」
女子生徒B「美華もうおじけづいちゃったんだ」
女子生徒C「もう唯愛も終わりだね」
そお言って私が席につこうとするや否や、近づいてくる。
そして私の髪を引っ張り、掃除用具入れの中からモップを出し私の顔に押し当ててくる。
女子生徒A「全ての始まりはお前なんだよ~」
そおいってさらにモップを押し当ててきた。
これを...。
これを美華は何日も何日も...。
そう思うと涙がこぼれてきた。
本当にごめん。
美華...。
ガラッ。
朝礼のチャイムがなる15分も前に圭はやってきた。
そして私の様子を見て彼は言う。
「お前ら何やってんだ?」
冷静な声に聞こえたが、声から怖さが伝わってくる。
女子生徒A「唯愛がやって~って言うからさぁ」
よくわからない嘘をつくもんだ。
圭「そんなわけないだろ。そんなにそれがしたいなら俺にやれよ」
「えっ?」という数人の言葉が教室中に響き渡り、一瞬で静まった。
彼は怒るわけでもなく、叫ぶわけでもなく。
まさかの自分にやれと。
するとモップを持った女子生徒は先生に言った。
女子生徒A「先生。唯愛の事どう思ってるの?前、公園に一緒に二人でいたでしょ?」
ついに確信をついた。
それを聞き、しばらく下を向いて黙っていた圭が、顔を上げ皆の方を見て言う。
「うん。公園に二人でいたよ。あの日、彼女の母親がいなくてね。帰り道、変な男に絡まれてたって学校に電話があったんだ。たまたま電話を取ったのが僕で。だから、急いで駆けつけて。大丈夫だったんだけど、しばらくそばにいてあげたよ。普通その時間は、だいたいどこの家庭も母親がいる時間なのに、いないっていうから、その家族の事情も聞いていたんだ。だからこれ以上皆に何か言う事はあるかい?人それぞれ家庭の事情があるんだから、皆には話したくないだろ。」
そお言い、生徒全員を黙らせた。
「だから、もし何か僕と彼女の事で変な噂がたっているんだったらそれは違う。彼女もだし、美華さんに対してもそうだけど、イジメる理由はないよ。もし理由なくイジメてストレスを発散させたいんだったら、僕をイジメたらどうかな?別に誰にも言わないし、全て受け止めるよ」
これを聞いた皆はその場で下を向き、黙る。
手に持ったモップを静かに掃除用具入れに返しに行く女子生徒。
圭は凄い。
絶妙な嘘。
紙一重。
もし公園での出来事を一部始終見られていたら、嘘がバレていたかもしれない。
だけど、彼はもし他の事言われたとしても何かしら上手な嘘をつけただろう。
その彼の言葉で私と美華に対するイジメはその日を境に終わった。
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