第28話 初メテノ言葉

 「圭。ありがとう」

私は圭と学校の屋上にいた。


彼が私と家族の事で話をしていると皆の前で言った為、私達が学校で話していることも、ごく自然になったのだ。


 「うん。全然大丈夫だよ」

彼はニコッと笑って私の方を見る。


久しぶりに彼の笑った顔を見た。

やっぱりこの笑顔が好き。くしゃっとした笑ってない普通の時はどちらかと言えばクールで近寄りがたい印象なのに、笑うと全く変わる。


そしてあの事を聞いてみた。

 「ねぇ。私達二人が公園にいた理由、家族の事で話してたって言ってたけどどこまで皆が知ってるかわかってたの?」

私は聞いた。


 「あー。あれね。とっさにでた思いつきの嘘だよ。正直どう言えば、皆が納得するかわからなかったけど、とりあえずこれなら大丈夫かと思って自分でしゃべりながら考えてた。だからもしあれ以上、他の事突っ込まれてたら危なかったよ」

彼はこっちを見ながら苦笑いしてそう答えた。


思わず私にも笑みが溢れてしまう。


 「そおだったんだ。ホント危なかったね。でも、その咄嗟の思いつきすごいよ。これでなんとか一人安心だね」

彼の臨機応変の良さに感心していた。


その平穏なひとときも束の間。

 「いや...。まだ安心できない...」

彼がボソッと言い、私はハッと気づいた。



そう...。


まだ、ゆみ先生がいたのだ。


私達が公園で話していたことを皆に広め、こういう最悪な事態になっていたことに気づいていたにもかかわらず、影で見て笑っていた彼女。


 一瞬にして2人の笑顔は消えた。


 「ゆみ先生、クラスの皆に比べて甘くないから、相当やっかいかも...」

私はそう言って下を向いた。


 そしてしばらく黙っていた彼が口を開く。

 「大丈夫だよ。俺に任せて..」

笑顔で私の顔を見て言ってくれていたが、彼の声は震えている。


 前、保健室で言われた時よりも自信はなさそうだった。


でもそれもわかる。


あのゆみ先生だもん。


目の奥が笑っていないし。


怖い大人の女。


私に嫉妬していたはずなのに、あえて美華をイジメるように仕向けたあの巧妙な手口。


私でも怖いよ。


せっかくここまで来たのに...。


 すると彼が口を開いた。

 「僕がこれから彼女にしようとしていることは、唯愛を悲しませてしまうかもしれない」


 「まさか命に関わるとかじゃないよね...?」

私は彼の言葉を聞き恐る恐る聞く。


 「それはないよ。絶対にそんなことはしない。色々考えた結果、これしか方法はないんだ...。だから...。これだけは信じてほしい」


 





 「僕はこれからどんな事があっても唯愛を愛しているよ」






 初めて言われた...。



 圭に...。



 愛してると




そお言って彼はその場を立ち去っていった。

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