第26話 立チ入レナイ壁

 「先生。なんで美華なの?私じゃないの?」

私はゆみ先生にそう言った。


 「そんな事言われてもわからないわよ」

先生は冷たい顔になり、冷静に私の方を見て言う。


本当にこの人は怖い。


なにを言っても動じない。


圭があの時言ってたこと。


 「やっと手にした彼女なのに、手にした途端、急に彼女の事がよくわからなくなってきてね。近寄りがたいというか...。」

たしかこう言っていたはず。


圭ですらもこの人と付き合ってみて、これは入り込んだらいけない強い壁を感じたんだ。


ほんと...近寄るのが怖い。


これなら彼がわからないのも当然。


 でも今はこの場をなんとかしないと。

そう思い、美華を抱きかかえようとしたその時。


 「ちょっと!何があった?」

振り返るとそこには圭がいた。


彼が来たことにより明らかに動揺するゆみ先生。


 「階段から落ちちゃったみたいで心配してたのよ。それで保健室に連れて行こうと思って」

そお言ってゆみ先生は倒れていた美華に近づこうとしていた。


すると、その行動を見て圭が口を開く。


 「僕が連れて行くから大丈夫です。先生は帰ってください」

そお言って、美華を抱きかかえ、私と一緒に保健室までいった。

その場を離れる時、私達3人全員がわかる程の、強く冷たい視線を感じ、後ろを振り返る事を拒絶していた。


 

 美華を抱きかかえた彼と保健室につき、その場で応急処置をする。


左足の捻挫。


肩の打撲。


後ろからシャツを少し捲ると、背中にはたくさんのアザが。

私が知らないところでもたくさんのイジメを受けてきたんだ。

そのアザを見て涙がとまらなくなる私。


 唯愛「美華...。ごめんね。本当にごめんね」

なにもする事ができなかった私。

彼女の体中の怪我を見て謝る事しかできなかった。

そしてこの怪我を一緒に見ていた圭が口を開く。


 「二人とも。何があった?」

私たちの顔を見ながらそう言った。その目には涙が浮かんでいた。

その涙につられ、涙を流す美華とさらに涙がとまらなくなる私。

私は過呼吸になり言おうと思った事が言葉に出せなかった。

それに比べ美華は、涙ながらに彼に今まであった全ての事を話す。



 圭「そうだったのか...」

そおいって圭は下を向き、溜めこんでいた涙がついに零れ落ちた。


美華ですらももうすでに限界がきていた。

今まではなんとか私の前では笑顔になっていたが、もう彼女の顔には笑顔を作る元気すらない。


しばらくして圭が立ち上がり私たちの方を見て口を開いた。


 「全ては僕のせいだ。本当にごめん。でも二人ともよくここまで頑張った。後は僕に任せて」

そお言って涙ながらに笑顔を作り私たちの手を握った。


 唯愛「任せてって...。大丈夫なの?」


 圭「うん。大丈夫!」

彼の覚悟をした表情に、私と美華は一気に力が抜けそのまま保健室のベッドで眠った。



私たちはここまで耐えてきた。


でももう限界。


イジメはなくならない。


どうすることもできない。


こうして次の日から圭の反撃が始まる事になる。

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