第25話 笑顔ノ悲シミ

 「また上靴がなくなってる...」

あの日からクラスの人から美華に対するいじめは始まった。


 唯愛「大丈夫...?私が悪いのに...」


 美華「なぁに!唯愛は全然悪くないよー!こんな上靴隠されるぐらいへっちゃらへっちゃら~!」


 唯愛「本当ごめんね...」


 美華「唯愛の事は私が守るから大丈夫!」

彼女が笑顔で私に大丈夫と言えば言うほど私は辛くなっていった。


最初は上靴を隠されたり、無視されたり、机に落書きされたりとその程度のものだったが、だんだんといじめはエスカレートしていく。

教室を歩いていると、足を引っかけられたり、汚い雑巾を頭に乗っけられたりと。


元々は私がいじめられてもおかしくないのに、彼女が標的にされていじめられているなんて。


でもこんな目に合っても美華は、私の前では笑顔を絶やさず、そばにいてくれた。

一緒に帰る時も、いじめの事には一切触れず、前の動物園での話や、彼の話をたくさん話したり、聞いたりしてくれた。


 今日も一緒に下校し、彼女は笑顔で手を振り私に言う。


 「唯愛ー!明日も迎えにいくからねー!また面白い話考えといてよー!」

彼女はそういっていつも"じゃあね"をする。


心も体もボロボロなはずなのに。


イジメられてる人にすぐに言い返すことができるのに。


でも何も言わずに事が収まるよう、私を守ってくれている。


教師と生徒のいけない恋をしたのは私なのに。

何もできない自分に私は悔やんだ。


それからもずっとその繰り返し。

私がなにもできずにいるから、こうして次の日も、その次の日も美華に対するいじめはヒートアップしていった。


彼女の机にはたくさんの泥が押し込まれていたり、トイレにいれば外からバケツで水をかけられ、終いには階段を歩いていると足を引っかけ転落させて怪我をさせた。


 唯愛「美華!大丈夫?」


それでも我慢をしてなにも言わない美華。

私に対してだけはずっと笑顔だった。


もう耐えられない...。


私はそれを黙ってみておくことができなかった。


ついにイジメているリーダーの女子生徒に対し口を開く。


 「元はと言えば私が悪いんだから美華にそんなことしないで!」

勇気を出していった。今後の恐怖に恐れながらも。

だが勇気を出していったのも束の間。


 女子生徒「淫乱女は黙れ」

そお言い放ち、その場を離れていった。


どうすることもできずその場で涙を流す私。

階段の下で転落させられ、うずくまっている彼女。


するとそこへあの人が現れた。


 「あら~!どうしたの?大丈夫?二人して」

この色気を使ったしゃべり方。


ゆみ先生だった。


 ゆみ先生「足引っかけられたの?それで転落しちゃったの~?」

私はハッと気づいた。


なんで先生は見てもいないのに足を引っかけられたって知ってるの?


どうして?


まさか?


その事は美華にも同じように感じていた。

コケて蹲っていた美華がゆっくりと立ち上がり先生に言う。


 「なんで知ってるんですか?」

苦し紛れに言った。

すると先生はニコッと不敵な笑みを浮かべこの言葉を言う。


 「さぁ~なんでだろう。私、自分の事はよくわからないの」

子供みたいな発言だ。


最低な人。


初めから薄々私は感じていたけど、顔がいいってだけで人を釣っている感じ。


普通の人にはわからないと思う。


第一印象なんてすごく印象がよかった。


あの全校集会での挨拶の時も。


それからも学校内の先生や生徒からもかなりの人気であることは間違いない。


この人をよく見ると目の奥が笑っていないことに気づいた。


他の人にはきっとわからない。


私だからこそわかるその冷たい目。


この人が私と彼の事、皆に言ったんだ。それに美華のことも、どこかで見ていたんだ。

それにこの事を知ったら、美華が私を守り、それが引き金になってイジメになることがわかっていたんだ。


全てが繋がった。


高みの見物。


嫉妬...。


もうこれは嫉妬じゃない...。


ゆみ先生の嫉妬から、イジメはここまで広がっていた。

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