第23話 未熟ナ私

 そして夕陽が完全に沈んだ頃、私は圭と公園のベンチに座り話をした。


 「...あの。前図書室で見た時の事なんだけど...」

ずっと避けていたあの事を聞いてみる。


 「ゆみ先生と付き合ってるの?」

私は彼の目を見てこの言葉を伝えた。

もう覚悟はできてる。


すると彼が答えた。

 「彼女とは昔付き合っていたんだ。だから今は付き合ってないよ」


私はビックリした。今は付き合ってない。なのになんであの時キスをしたの?

そう思った。


 圭「大学の頃同じクラスでね、彼女の魅力に一目惚れした俺は告白したんだ。そしたらフラれちゃってね。それから何度も何度も告白をした。

それで、告白し続けてから一年後。やっとの思いで告白を受けてくれて付き合うことになったんだよ」


 唯愛「でもどうして別れたの?」


 圭「俺は付き合ったことが初めてでね。やっと手にした彼女なのに、手にした途端急に彼女の事がよくわからなくなってきてね。近寄りがたいというか...。それに、付き合うってなんなのだろうって考えるようになっちゃって、まともに彼女と接することができなかったんだ」


 唯愛「...」


 圭「好きだから告白をしたのに、なんで好きなのかもわからなくなってきてね。結局まともにデートなんかもせずに俺から別れようって言っちゃったんだ」


 唯愛「そおだったんだ...」


 圭「だけど、大学卒業してから彼女とは離れ離れになったんだけど、この学校で、しかも同じ教師として一緒になってね。なにか彼女にも思うところがあったからあんな事したんじゃないかな」


 唯愛「圭はあの人の事どう思うの?」


 圭「僕は、改めて彼女と再会したけど、好きにはなれなかった。もちろん同僚であり大学からの友達でもあるから、話しかけられたら仲良くはしてるけど、付き合う前の時みたいに、彼女の事が欲しいとは思わないよ」


 唯愛「...じゃあ。じゃあなんで私にはキスをしたの?」


 圭「...なんでだろう...わからない」


 唯愛「まだ手にしてないからとかじゃない?」


 圭「...」


 唯愛「前、約束したように卒業してから付き合ったら、また私の事飽きちゃってるかも。今だからこうして必死になってるけど、二の舞になっちゃうよ」


 圭「...正直これから先の事はわからない。だけど俺は今、唯愛の事が好きなんだ!」


 唯愛「そんなのわからないよ...信じられない」

私はその場を立ち去ろうとした。


 圭「唯愛!ちょっと待って...」

私の手をつかむ彼。

彼の方を振り返ると今までに見たことのない焦った表情をしていた。


 圭「今はなんとも言えない。だけど信じてほしい。俺自身前と同じにならないか不安はあるけど、でも...前とは違う何かを唯愛といる時には感じるんだ」


 圭「まだ全然しっかりしてないし、唯愛を一つも守ってやることもできてない。でもこれから、どんなことがあっても唯愛のそばにいたいんだ。他の皆が敵になっても俺は唯愛を守りたいんだ!」



本当...。私は馬鹿だ。


こんな曖昧な答えしか返ってこなかった彼の言葉に心が動いてしまう私。




 唯愛「...わかった」

そお彼に言って公園を立ち去った。


私は公園の入り口にある花壇に、一つだけ大きく育っていない"ナデシコ"が咲いているのを見て思う。




私も同じだ。




 

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