第19話 好キト愛シテル

 そして熊谷動物園についた私達。


今日は他のお客さんも多かった。

カップルや家族連れ。以前彼ときた時と比べて圧倒的に多い。


以前は人が少なく安心した私がいたが、今日は人が多い事に安堵している私。

この違いはなんなのだろう。


 美華「唯愛ー!久々の動物園だよー!どこから周る?」

前彼と来た時はキリンとパンダしか見れなかったから他の動物も見たい私。


 唯愛「近い所片っ端から行こうよ」

そお言って、仲良く二人で腕を組みながら動物園を周る。


まずはフラミンゴ。そしてペンギンやアザラシ、カンガルーと二人で動物をバックに写真を撮りながら楽しんでいた。


二人で写真を撮る時も、彼女は私に頬をくっつけ満面の笑みで写真を撮る。

少しお腹が空いたと思えば、二人で味の違うアイスクリームを買い、食べあいっこをする。


ごくごく普通の女の子友達。

私たちが、恋愛関係になろうとしている事なんて周りは思ってもいないだろう。



 美華が告白してきた時...。


愛しているよ。と言っていたが私がそれを受けた場合、彼女は何を求めてくるのだろうか?


今もこうして腕を組みデートを楽しんでいる。


前はあのシチュエーションでキスをされたから衝撃を受けたものの、SNSなんかで、同世代の子たちが投稿しているのを見るが、皆普通にキスしあっているのもよく見る。


キスをする時、またされた時にお互いどう思うかなのか。


それに彼女はキス以上を求めているのか...。



 私に置き換えてみると、彼の時はどうだっただろう。


まず彼の香りがしただけで頭の中がふわっとしてしまう私。


指を触れられただけで、全身が熱くなり溶けてしまいそうにもなる。


キスをされた時は彼の全部が欲しくなってしまった。


でも彼の気持ちは私にはわからない。

私は彼に伝えることで何を求めている?


逆に私にキスをしたとき彼女はどう思っていたのか?

愛してるといっていた。


私は美華に頭を撫でられるとホッとし落ち着く。

だけども、ドキッとする感情はそこまで生まれない。

どちらかと言えば安堵。


でも彼女に告白されてからは手を繋がれるとドキドキしてしまう私。

意識されてると思うからなのか。



好きと愛してるの違いは?

彼は私に何を求めキスをし、彼女は何を求めキスをし愛してると言った?

私はその二人と比べてなにを思っている?


好きってなに?


愛してるってなに?


私はどうしたいの?


 私の頭がぐるぐるとまたなっていた。

するとアイスを食べ終えた美華が言う。


 「唯愛の部屋にパンダのぬいぐるみあったじゃん?せっかくだからパンダ見に行こうよー!」

そお言って私の手を握り引いた。


彼と見たパンダ...。


あのキスの事を思い出し、急に悲しくなる私。

パンダの所に向かう途中、彼女の後ろで涙が溢れた。



 圭に会いたい...。



そう思うと涙がとまらなくなる私。


少しの手の握りの変化に気づいた彼女は走るのを止め、私の方へ振り返る。


 「唯愛?どうしたの?」

心配した彼女はまた私の頭を撫でてくれた。


 「...。美華。ごめん。私言ってなかったことがあるんだけど...」

そお言った私に対し、彼女は優しく手を繋ぎ近くのベンチに一緒に座ってくれた。


 美華「うん。どおした?」


 唯愛「ここの動物園...。前に圭先生と来たことがあるの...」


 美華「...」


 唯愛「その時先生にキスされた...。前にもされた事があって2回目なの」


 美華「そう...」


 唯愛「それで私、先生の全部が欲しくなっちゃって、その時先生に告白したんだけど、先生に卒業するまで待って。と言われて」


 唯愛「その後、美華が助けに来てくれた図書室で彼とゆみ先生がキスしてたのを見ちゃって...それで全てがわからなくなっちゃって...」


 美華「そおだったんだ...」


 唯愛「そしてその後、美華が私に愛してるって言ってくれたの...」


 美華「...」


 唯愛「私が先生に告白した時とは重みが全然違くて、すごく伝わってきたの。だからこうして美華ときちんと向き合いたいと思って動物園に来たんだけど...でも...」

その時美華は私をパッと抱きしめた。


 美華「もう...。もう...それ以上言わなくていいよ」

優しい声でそう伝え強く抱きしめる彼女。


 唯愛「でもこれだけはいいたい...。私は未熟で恋愛経験なんてほぼゼロに近い。美華の告白は初めはびっくりしたけどすごく嬉しかった。好きでいてもらうことってこんなにも嬉しいんだって思った。それ以上先の事はわからないけど、でも私も美華の事好きだよ!大好きだよ」


 美華「ありがとう。唯愛」

彼女は抱きしめながら頭を撫でてくれた。


その彼女の顔には、大粒の涙がたくさんこぼれていたことは私は知らなかった。


 

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