第10話 好キト性

 一緒に写真を撮った私たちは、その後パンダを見に行くことにする。


 私は本当にパンダが好き。

小さい頃動物園にいってパンダのぬいぐるみを買い、それをまだ未だに家に飾ってるぐらい。


 そしてキリンがいた場所からさらに丘を上っていくとそこにはオスとメスのパンダが一匹ずつ戯れていた。


 唯愛「かわいー!」

つい声がでてはしゃいでしまう私。

彼もそれに続き同じことをいう。


 オスとメス。

こんな狭い空間なのに2匹ともお互い離れず、ずっとくっついたまま。

メスがどこかに行こうとすれば、オスはそれに続き、また再びくっつく。

メスが上を見上げると、オスも同じように上を見上げる。

恐らくこのパンダはオスがメスの事大好きなのが見ててわかる。


 この2匹はいつから一緒にいるのだろう。


どちらとも特に鳴き声を発してるわけではないが、声とは違う何かで意思疎通をしているように見える。


私達人間と同じで駆け引きとかしてるのだろうか。

少し離れて様子を伺ってみたり、そんなことしないのだろうか。


動物は素直だ。私達も本来は動物なのに、素直に行動に移せない。

どちらかと言えば失敗した時のリスクを考えてしまう。


フラれたくない。


離れてほしくない。


そう思い、今の現状で満足しようとする。


でも彼はいつ離れるかわからない。

彼にいつ、要らないって言われるかわからない。

だから皆、じゃあ付き合おう、結婚しようとなるのか。

それをすることで自分の好きな相手を自分の"物"にできるから。


誰にも渡さない。


これは私の"物"。


でもそんな事をしても動物は動物。


嫌いに一瞬でもなれば、いくら縛っていても自分から抜け出そうとする。


そしてその逃げた"物"は自分が好きな人をまた探し、見つけたそれを"物"にしようとする...。


逆にこのパンダと同じように、決められた世界に私と彼しかいなかったらどうなんだろう。


このオスのパンダと同じように彼も私を求め、私に好かれようと必死で私から離れずずっとそばにいてくれるのかな。


私をたくさん求めてくれるのかな。


私も同じ。


他に彼と関わる人がいるから私も不安になり自信が持てない。


見てほしい。

このメスのパンダを。


オスに対してどれだけの色気を放ち自信を持っているか。


 私をみて。


 私のこと好きなんでしょ?


そんな事を言ってるように見えたのは私だけだろうか。


 ちなみにこの狭い空間の中にオスとオスがいたらどうなのだろう。

お互い好きになり、動物の欲求である"性"の力は働くのだろうか。


どう考えても子孫を残すことはできないが、二人の欲は止まらないから、互いに求めあう日はきっと来るのだろうなと思う。


でも同性であれ好きになれば関係ない。

好きだからといって完全にそれが"性"と結びつくわけではない。


子孫を残せないとわかっていても好きは好き。


私も同じで、好きになってしまえばそれがどんなにいけないことでも嫌いにはなれない。


教師と生徒。


いけない恋。


誰にもバレたらいけない恋。

....。


パンダを見ながらそんな事を考えていると、彼がそっと私の指に触れてきた。


私の人差し指を彼の3本の指がゆっくりと絡ませてくる...。



ここは薄暗い空間。

他にパンダを見ている家族連れが2組ほどいたが離れていた。



私もパンダの様子を見たせいか気づけば、彼の人差し指を3本の指で絡ませる。



 ...そして周りに誰も人がいなくなり、私達はこの薄暗い中で見つめ合い、キスをした。

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