第5話 はじめての終点駅
キセルという不正乗車を伝える用語がある。
まあ犯罪なのだが多分人類が2番目に侵している法律だと私は思う。
寝坊したら知らない駅に飛ばされている。
なんかこっちが被害者な気がするがお金を払っていない区間を乗ってしまっているので立派な不正乗車だ。
キセルを寝坊でしてしまうと、こっちは不快になるし鉄道会社側は損をするしでルーズルーズ。まあ睡眠を取れば私の脳を除けば。
ちなみにであるが日本人が一番犯している方は道路交通法らしい。
とはいえ田舎の深夜だとほぼ機能していないのだが...。
一瞬爽やかな風と共に静寂の夜が広がると思わせておいて、裏の顔は道路に仰向けで寝そべる人、妖怪ウォッチでもやっているのかという赤信号の歩道を往復する人、あからさまに法定速度の2倍を超えているツーリング集団…。冷静に考えると田舎は法律が通用しないのかもしれない。
法律より校則の方が強い。かなしい。
終点ですぐに発進しないとはいえ、ずっと車内にいるわけにいかないのでホームに降りる。
何回も寝坊して来ているはずなのに、観光客として来たことがないからか何処か煌びやかに見える。
ちょうど12時前。学生やサラリーマンが極度に少ないこの駅を見たことない。
なんか友達に休日あった時、制服を着ていないから別人に見えるのと似ている。
それともバイト先の先輩とたまたま会っても気づかないのに似ている。
…………。
この感じ、なんかいいなと思う。
同じなのに違う。違うのに同じ。
人は立場で見えるものが違ってくる。
また次来た時は立場も違うし事情も違うので、同じ名鉄岐阜駅は見れないかもしれない。
高校生でしか見れない景色もあるのかもしれない。
模試をサボってしか見れない景色は見れないかもしれない。
しかしそういう物はだいたい失って気づく物。
旅は失わなくてそういうことに気づけるから良い。
息を吸いながら前へ歩き、息を吐きながら改札を越える。
初めて改札を越えた名鉄岐阜駅は、なんか……。
普通だ!
後半へ
伊良湖まなかのだいぶおかしいたび日記(Text Blog) ワン @wannichijo
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