第4話 旅の移動は思いふける 後編
規則性のないゲコゲコとした鳴き声とは裏腹に、規則性のあるコトンコトンというリズムが耳を触る。
電車に乗ると必ずと言っていいほど聞こえるあの音を思い出しながら読書をする。規則性があるからなのか否か、私の意識からはすぐに音が消え去る。まだ駅も遠い。あと40ページは読めると思う。
物語は少しずつ動いてゆき1週間で進んだページは半分。「白夜行」という名著を恥ずかしながら今読んでいるのだが、想像以上に面白く、そして想像以上に鉄道要素がない。
気づいたら鉄道を目で追ってしまっている。小説の中でも鉄道要素を目で追っている。これは旅する少女の性では決していない。ましてや私が鉄道が好きなわけではない。絶対。
私の一番仲良くしていた先輩は鉄オタだった。いや本人は同族嫌悪なのか否定していたが絶対にそうだ。
これは鉄オタに限った話ではないが、だいたいの趣味がオタクレベルまで達すると対象を型番で呼び始める。
「2200系が~」
もう覚えてしまった。今日の模試会場は忘れていたのに…はいいとして。
話が逸れてしまったけれども、いやこれからも話はそれつづけるけれども、私は人生で奇跡的に鉄オタを欠たことがない。
運命的と言っていいのかいつでも鉄オタとめぐりあえる。というか私の弟がもう鉄オタだ。私の初めての友達も鉄道好き。私の初恋も鉄オタ。
鉄道が好きになれればどれほど楽しいだろうか。いや別に鉄オタの相手をすることがつまんないわけではないけど。どうしても鉄道に魅力を感じることができない。
私は高校は田舎高校という公立高校に通っているのにも関わらず、なぜか中学は受験(フリーパス)をして名古屋と田舎高校のちょうど間の前後駅が最寄りの中学へと通っていた。
一般的に公立中学へと通うならば通学手段は自転車、時々徒だとと思う。しかし私は電車だった。
そろそろみんなも感じ始めているかもしれないが私は怠惰だ。はずかしながら。模試会場を間違えまあいいかと済ませる程度には。
怠惰×電車通学の化学反応式は思ったよりも派手でおもったよりもしょうもない。私の-----
「まもなく名鉄岐阜~」
脳みその音が現実に負けた。ぷつりとモノローグは消え、時間があったのに10ページしか進んでいない小説を自然に閉じた。
これが化学反応式の答えだというと不自然かもしれないが正解である。
なぜならば朝田舎駅で乗って寝て、日本地図的に名古屋の右で降りるはずの電車が名古屋の大分左の場所、岐阜についてしまっているからだ。
さあおりよう。旅はまだ途中駅だ。
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