第336話 愚策の責任者~ズ、大慌て
「なにぃ⁉失敗だとぉ⁉」
あり得ない報告に、つい聞き返してしまう全米カウボーイ協会本部長。
ラスベガス支部の上位組織である。
ラスベガスFダンジョンのレイドバトルは、元来『1対1』で戦う敵を10人の高レベルカウボーイで叩きのめす。
失敗するほうが難しいバトルだ。
なのに、失敗。
え?
「ルール破りでダンジョンの怒りを買いました。
ダンジョンが溢れ、多数の死傷者が出ています。」
報告はラスベガス支部長からだ。
本部はワシントンにある。
ちょっと窓の外を確認……
とはいかないから、本部長は秘書に指示し、ライブ映像をパソコンに映し出す。
赤い霧に包みこまれていた。
「赤い……」
「はい。どこからの映像かわかりませんが、その赤い霧が包み込んだ部分はダンジョン化しています。」
本部長は定点カメラの視点を切り替え、切り替え……
やっと、希望のアングルを見つけた。
街を遠景でとらえた画像で、赤い霧がボールを伏せたように街の一部を包み込む。
おそらく中心にFダンジョン……
「ダンジョン化とは?」
「モンスターが街を闊歩しています。住民を傷つけ、殺しています。」
「避難は?」
「何せいきなりの事態だったので、全く行われませんでした。」
頭の痛い事態だった。
しかし、奇妙な違和感がある。
ラスベガスは今この大災害にあたっている。
支部長は臨場しているはずであり、その割に他人事……
と言うか、臨場感がないのだ。
「救助にはあたっているのか?」
「それが……」
「?」
「ダンジョンがカース(呪)化し、レベル200を超えるカウボーイでも太刀打ちできない事態です。」
「じゃあ、どうしているんだ⁉」
「それが……」
「えっ⁉」
説明によれば、今回のレイドバトルについて、非公式ながら日本の探索者が止めるよう助言していた。
不確定要素が多過ぎて危険であると。
それを強行した結果の体たらくに、怒った彼らが助けに来てくれている。
今ダンジョンがこれ以上広がらないように防ぎ、人々を救い出し、その怪我を癒しているのは日本人だ。
『え?なんでそんなことに?』
と、本部長は思う。
自分らで解決出来ていない情けなさと、何より国際問題だ。
いや、非公式な要請だったらしいし、彼らも勝手に来ているし。
それに日本だ。
日本なら、わが国も恥を広めることはないのではないか?
ちょっと圧力をかければ……
犠牲者より何よりすぐに余計なことを考えたのは、このレイドバトルがラスベガス支部だけのものでは無くなっていたから。
ショーンの能力を知ったラスベガス支部長が企画立案したのは間違いないが、それに許可を与えたのは本部長で、
「面白い。やってみろ。」
と言ったのは、ダンジョン庁長官。
「わかった。」
と最終的なGOサインを出したのは、合衆国大統領だ。
青の非公式な懸念などで、計画が止まるはずはなかった。
すでに国家戦略になっていたのだ。
本部長が慌ててダンジョン庁長官に連絡を取ると、すでに彼はホワイトハウスにいて、大統領と面談している最中だった。
「〇〇を見ろ。
すでにネットニュースに上がっている。」
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