恐竜がパステルカラーで塗られていても、僕達に反論出来る根拠はない
@ju-n-ko
1章 少年と少女ときつねの迷宮
第1話 少年は激走する
「なんでこうなるんだよ‼」
叫びながら自転車を漕ぐ。
チェーンから異音がしている。
やばい、切れるかもしれない。
でも今は、これだけが……
ただ必死で漕ぐことだけが命綱だ。
少年は無我夢中だった。
自分が乗り、妹も乗った。
ハンドルには幼児用の座席がついたままの、12年選手のママチャリだ。
そら、錆びてもいるわ。
「頑張れ‼オーロラ号‼」
いや、なんで、そんな名前?
おかんがつけた。
昔からそう呼んでいた。
「青。オーロラ号で買い物行くよ。」
だからなんで、オーロラなんだ‼
支離滅裂な思い出の羅列は、まさかこれが走馬灯か?
まあいいや。
オーロラ号に全て任せた。
久々の全力疾走に軋みながら、君の最後の足掻きに全てベットだ。
オーロラ号の幼児席には、少年の妹が乗せられている。
小学校の1年生。
8月生まれだけれど、早生まれと勘違いされる。
小さく細い妹も、さすがに幼児席はきついようだ。
時々身動ぎしている。
でも、ごめん‼
今は乗ってもらうしかない‼
前かごには少年の学校カバン、自転車の後部席は買い物用にかごが付けられ、人が乗るようにはできていない。
そこに少女のランドセルと、子ぎつねが1匹乗っている。
子ぎつね、だ‼
少し前に助けた。
放って置けない。
「くそう‼」
喚きながら自転車を漕いだ。
少年が激走しているのは、洞穴のような、奇妙な空間。
でこぼこの道でオーロラ号が跳ねる。
「ぎゃっ‼」
「にゃっ‼」
「きゅん‼」
三者三葉(1人はきつね)に叫んで、疾走‼
☆ ☆ ☆
「ねえ、にぃ?これ?」
1週間ほど前の、妹の入学式のその夜だった。
少年と少女の住む村は、いまだに『村』と呼ばれる場所で、ちょっと買い物に出るのも自転車で30分以上かかる。
山間の村で、どうしようもなければ自転車で出るが、基本は自動車、まとめ買いスタイルの生活となる。
適当に父か、母が買ったのだろう。
いや、小学校1年生用に買うわりに適当だから、これは父親の仕業かもしれない。
少女が差し出したのは塗り絵の本で、本当に適当だなと思える、なんと恐竜の塗り絵だった。
「これ、どんな色で塗ればいい?」
妹は、それが昔地球にいた生物だと、知っている。
けれど、見たことはないのだから、当然色はわからない。
それゆえの疑問だったのだが、兄の答えは明白だった。
「何色でもいいんだよ。」
少年は、BSの番組だったか?この前テレビで見たのである。
恐竜は、化石となって現代にある。
化『石』、である。
一部皮があったとか、羽毛があったとか言われているが、全て今は石になっているのだ。
色なんて、どこにも正解がないじゃないか。
「ひまの思い通りに塗っていいんだ。」
兄の説明に大きく頷き、妹は好きな色ばかり選んでティラノサウルスを塗った。
お陰で地の色はピンク、オレンジ色のドット柄の、お洒落サウルスが完成したが……
それが間違いと断定できる、根拠はこの世界にないのである。
朝6時前後に毎日更新いたします。
本日夕方より異世界ファンタジー始めます。
『帰るまでが遠足ですか?……出だし土下座で始まる異世界迷走……』
よろしかったら、こちらにもどうぞ。
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