第10章396話:古代樹の森4

そのとき女ケンタウロスが、仲間の二人に問いかけた。


「しかしこいつ、メイドを連れているあたり、貴族なんじゃないの? 貴族を狩って大丈夫かしら?」


答えたのは坊主ケンタウロスである。


「問題ないだろう。二人とも殺してしまえば、ケンタウロスの仕業だとはバレない。魔物に殺されて死んだと解釈される」


「そうだぜ。今までそうやって殺してきたが、一度もバレなかったしよ。今回も同じようにやるだけだろ」


と茶髪ケンタウロスも述べた。


「それもそうね。じゃあ、狩りをはじめましょう」


と女ケンタウロスが述べる。


ケンタウロスたちが各々の武器を構えた。


「これは戦うしかないようですね」


と私は言った。


アリスティがうなずき、肯定の意を示した。


このケンタウロスの賊たちは、たぶん、かなり強い。


なにしろ強い魔物が生息する【古代樹の森】を生業なりわいにしているわけだし、手練てだれの冒険者を標的に略奪をおこなっているぐらいだ。


ただのの盗賊とは、わけが違うだろう。


しかし。


「アリスティ。威圧をお願いします」


と私は命じる。


アリスティの【威圧の指輪】を使えば、一瞬で決着がつくと思ったからである。


「はい」


アリスティは、威圧を発動した。


「む!?」


「え!?」


「なんだ!?」


威圧を食らったケンタウロスたちが、緊張の面持ちになった。


おびえの表情がうかがえる。


威圧が効いているな。


その隙に、私はアサルトライフルを取り出して、ケンタウロスたちに向けて発砲した。


ズダダダダッ!!


と5発程度。


しかし。


「ん……」


ケンタウロスたちは素早く回避行動を取って、アサルトライフルの弾丸をかわした。


体格のわりに、驚くべき身のこなしである。


いや……そうではなく。


(威圧が効いているのに、動いた?)


威圧は、相手の動きを封じる能力がある。


だからアリスティに威圧をかけられた相手は、身動きが取れなくなる。


威圧が効かなかったということだろうか?


(いや……違うな。たぶん効いてるけど、効き目が強くないってだけなんだろうね)


【威圧の指輪】は戦闘能力が低い相手の動きを鈍重どんじゅうにさせる能力がある。


しかし、弱い相手には抜群ばつぐんであっても、強者には効きにくい特性があるのだろう。


強い人間ほど精神力が高いので、威圧の自力で減殺げんさいできるのかもしれない。


つまり、それだけケンタウロスたちが強者だということだ。


「威圧がいまいち効いていません」


とアリスティも、分析を口にした。


私は告げる。


「ある程度は効いているようですから、そのまま続けてください」


「承知しました」


とアリスティは応じた。



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