第10章394話:古代樹の森2

古代樹の森を歩き出す。


地面には大きな木の根が張り巡らされているので、足場あしばはあまり良くない。


気をつけないと、樹根じゅこんにつまづいて転んでしまいそうだ。


足元に注意ながら、私たちは奥へと進んでいく。


30分ほど歩く。


古代樹の森の散歩を楽しむ。


本当に綺麗な森だ。


こけむした樹。朽ち果てた倒木。


垂れ下がるツタや蔓草つるくさ


小さな赤い花や、青い花が群生していたり。


白いイタチが、樹根のうえを走り抜けていく。


古色蒼然こしょくそうぜんとした雰囲気がただよい、静謐せいひつとしている。


少し歩いたところには、太古の建物の残骸があった。


歴史を感じさせるような彫刻が刻まれた建造物。


おそらく二階建てだったのだろうけど、一階が倒壊して、屋根が斜めに傾いていた。


……と。


その残骸の近くに魔物がいた。


二本足にほんあしで立つ犬の魔物、コボルトである。


2メートルぐらいの体格があり、通常のコボルトよりも大きい。


おそらく【だいコボルト】であろう。


爪が凶悪なまでに長く、鋭利だ。


引っかき攻撃は危険だろうな……と思いつつ、私はつぶやいた。


「アリスティ」


「はい!」


名前を呼ぶだけで、アリスティが地を蹴って疾駆しっくする。


「ガウッ!!」


アリスティの接近に気づいた大コボルトが威嚇いかくの声を上げるも。


「ハァッ!!」


素早く大コボルトの間合いに踏み込んだアリスティが、拳の一撃を放った。


「グギャウ!!?」


ぶん殴られた大コボルトが吹っ飛び、大樹に激突。


さらにピンポン玉のように跳弾ちょうだんして、また別の大樹に激突した。


ようやく地面に落下する大コボルト。


当然、即死している。


私はアリスティに近づき、賞賛の言葉を述べた。


「お見事です。やはりアリスティには、ここの魔物は相手になりませんね」


大コボルトは冒険者でいうなら中級者や上級者ぐらいの人が狩りにいくモンスターだ。


しかしSランク級のアリスティならば、それを一撃で倒すことも余裕である。


むしろコボルトロードやコボルトジェネラルぐらいじゃないと歯ごたえがないかもしれない。


アリスティは応じる。


「ありがとうございます。しかし、まだ森の浅層せんそうなのに大コボルトが出てくるぐらいですから、奥はもっと危険な魔物がいると思います。油断せずにいきましょう」


「そうですね。念のため私も、音響兵器を装備しておきます」


アイテムバッグから音響指輪を取り出して、指にはめておく。


あとアリスティに電撃無効・音波無効のアクセサリー類を渡しておいた。


これでいつでも音響兵器とスパーク爆弾を使用することができる。



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