第10章393話:古代樹の森

シュルードと別れた日の、翌日。


朝。


私は姉上の屋敷の一室で起床する。


天蓋てんがいつきのベッドは、ふかふかだった。


お酒を飲んだほろ酔いもあいまって、昨晩はぐっすりと眠ることができた。


朝食を食べる。


羊肉のハム。


卵スープ。


牛乳。


プチトマトのサラダ。


パン。


……などがメニューである。


食事中、姉上は言った。


「私は今日、屋敷を空けるわ」


「何か用事でもあるんですか?」


と私は尋ねる。


姉上は答えた。


「当初の予定通り、王城にいって女王陛下に戦勝のことをご報告申し上げるつもりよ。それが終わったら、貴族や大臣のみなさんへご挨拶に」


「大変ですね」


「まあね。エリーヌはどうする?」


「うーん、私は古代樹の森へいこうかな、と思います」


もともと帝都に来た理由は、古代樹の森が近いからだ。


いわば古代樹の森を訪れるついでに、帝都に立ち寄っただけである。


「古代樹で素材採取がしたいんだっけ?」


「はい。欲しい素材がありまして」


人魚の指輪を作るために【古代樹の尖花せんか】が必要だ。


名前からしておそらく古代樹の森に存在する素材である。


「ただ、場所がわからないので、地図か何かあれば嬉しいんですが」


「ちょっと待って。あとでだいたいの方角を書いてあげるわ」


と姉上が言った。






というわけで、朝食を終えた後。


姉上から【古代樹の森】への地図を受け取り、私はアリスティとともに帝都を出発することにした。


キャンピングカーに乗って、走る。


快適なドライブをすること20分後―――――


私たちは古代樹の森へと到着していた。


「ここが古代樹の森ですか」


太古の樹木がそそり立つ森林――――古代樹の森。


樹齢じゅれいはいったい何年なのかわからないような、極めて巨大で古びた木々が立ち並んでいる。


足元には、そんな大樹たちの根が張り巡らされていた。


その根は苔むしていたり、小さな花やキノコが生えていたりする。


視界にはきらびやかに発光する蝶……【白光蝶びゃっこうちょう】がゆらゆらと何匹か飛んでいた。


とてもファンタジックで幻想的な風景である。


「素敵な雰囲気の森ですね」


とアリスティが感想を述べた。


私はうなずいた。


「ええ。ですが、姉上の情報によると、ここの魔物はそこそこ強いらしいです。私たちなら問題なく対処できると思いますが、一応油断せずにいきましょう」


「はい。護衛はお任せください」


とアリスティが応じた。


私はいつ魔物とエンカウントしてもいいように【射撃補正の指輪】を装備しておく。


これでよし。


さっそく私たちは【古代樹の森】の散策を始めた。



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