第10章392話:シュルード視点2

<シュルード視点・続き>


シュルードはエリーヌの言葉を思い出す。


(たしかエリーヌは、一週間以内に帝国をつと言っていたな……)


エリーヌの発言が嘘ではないとすれば、シュルードは一週間以内に結婚を承諾しょうだくさせなければいけない。


(まずは姉であるローラを説得して、外堀そとぼりめるか? いや、それでも時間が足りないな)


エリーヌ本人が乗り気でないなら、ローラの説得も容易ではない。


一週間では厳しいだろう。


それに。


(このままでは婚約が破棄されてしまう)


エリーヌは、シュルードと書類上の婚約関係が続いていることを知ってしまった。


役所に行って、正式に婚約破棄の手続きをされたら終わりだ。


下手をすれば一週間どころか、ほんの3~4日のあいだに婚約破棄が決まってしまう可能性もある。


どうやって対処する?


有効な手が全く思いつかない。


ならば。


(洗脳するしかない……か)


エリーヌに絶対服従を誓わせて、結婚を受け入れさせる洗脳――――


それしか方法がないように思えた。


シュルードは洗脳魔法は使えない。


そもそも洗脳魔法は伝説の魔法の一種なので、使える者は皆無だ。


だから古典的な方法での洗脳になる。


つまりエリーヌの尊厳を破壊することだ。


薬漬けにするのもいいだろう。


いろいろアイディアが浮かぶ。


(ただの令嬢ならば、ここまでする必要はないんだがな。新型馬車を持っているエリーヌを逃すのは、あまりにも惜しい)


実はシュルードは、部下を用いて、王都にやってくるキャンピングカーの姿を観察させていた。


馬を用いず、それでいて、通常の馬車よりも速いキャンピングカー。


戦争でも戦車として活躍したというのだから、恐るべき価値がある。


シュルードがエリーヌとの結婚を実現させたいのは、何もブランジェ家とつながりを持ちたいというだけではない。


エリーヌが有するキャンピングカーという利権を、バルター伯爵家と共有させるためでもあった。


キャンピングカーを大量に製造して販売すれば、莫大な利益を上げられるのは間違いないからだ。


(……役所が開くのは3日後だな)


エリーヌが婚約破棄の手続きをおこなうのは役所だろう。


今夜はもう遅く、役所は閉まっている。


明日・明後日も休日なので、役所は休業しているから、もしエリーヌが婚約破棄の手続きをするとしたら3日後だ。


つまり……


(3日以内にエリーヌを拉致らち監禁かんきんするしかない)


監禁さえしてしまえば、あとはじっくりと時間をかけて洗脳すればよい。


ちなみに拉致をするに際しては、護衛であるアリスティが大きな障壁しょうへきとなるが……


まあ、エリーヌが一人になるときもあるだろう。


そのタイミングを狙って、拉致を決行するだけだ。


(くくく。素直に俺と結婚していれば、こんな手荒てあらな方法を取らずともよかったものを。後悔するがいい、エリーヌ・ブランジェ!)


シュルードは、あくどい笑みを浮かべるのだった。



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