第10章388話:夜景とレストラン
「そうなの。でも
「高級店じゃなくてもいいです」
「んー、それならいくつか入れるところはあるわね」
「姉上のおすすめはありますか? できれば
そう正直に告げると、姉上は苦笑した。
私は、お酒を飲むのが好きだ。
庶民的なビールも、優雅なワインも、全体的に楽しめるタイプである。
「グレインバル……というレストランはどうかしら?
中産階級とは、いわば中流階級の
商人や薬師や法律家など、貴族じゃないエリートが該当する。
「いいですね」
「じゃあ場所を教えるわね」
姉上が
私は頭の中に地図を描きながら、レストランの場所をインプットした。
「ありがとうございます。アリスティを連れていってきます」
「ええ。いってらっしゃい」
姉上が去っていった。
私は出かける準備を始める。
とりあえずローブを脱ぎ捨てて、服を着替える。
パーティー会場にいくわけではないので、これぐらいの服装でいいだろう。
さて、アリスティと一緒に店へ向かおう。
帝都は夜もにぎやかであった。
街路には人が行き交い、酒場などの食堂、
そんな帝都の路地。
10階のアパートメントの
レストラン――――グレインバルだ。
(おしゃれなお店だね)
店内のあちこちに発光する鉱石が置かれている。
それが薄暗い店内をライトアップしている。
バルというよりは、ちょっとしたバーのような雰囲気。
「いらっしゃいませ。何名様でしょう?」
「2名です。予約はナシです」
「かしこまりました。
私は料金を支払う。
「
グレインバルは屋上がビアガーデンのようになっていて、帝都の夜景を眺めながら食事とお酒が楽しめるらしい。
「お願いします」
「承知しました。ではこちらへどうぞ」
と店員が案内してくれる。
いったん店の外へ出て、階段を昇り、アパートメントの屋上へ。
すると屋上にはいくつものテーブルが置かれており、静かにくつろぐ客たちの姿が見受けられた。
私たちはそのうちの一つに座る。
ややあってから食事が運ばれてきた。
肉や野菜料理。そしてワインだ。
食事をとる。
うん。美味しい。
ワインも濃厚で悪くない。
「ふう……美味しいですね」
と私は言った。
アリスティはうなずく。
「はい。それに夜空が綺麗です。こういう空に近い場所で食事をするのは、優雅な気分になれますね」
アリスティもご
(さすが姉上が紹介してくれた店だけあって、サービスは悪くないね)
と私は思った。
さて、食事はほどほどに、席を立った。
ワインを片手に夜景を眺めることにする。
屋上の端に立って、私は帝都の夜景を眺めた。
風が吹きぬける。
涼しい。
夜景も綺麗だし、星空や月も綺麗だ。
私はしばしうっとりする。
そのときだった。
「失礼。エリーヌ・ブランジェさんで間違いないか?」
と声をかけてくる者がいた。
男性である。
オレンジ色のウェーブの髪をしている。
おそらく貴族だ。
しかし見覚えがない。
「はい、私はたしかにエリーヌですが。あなたは?」
「俺は君の婚約者――――シュルード・フォン・バルターだ」
「……!?」
私は驚きに、目を見開いた。
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