第10章387話:帝都へ

<エリーヌ視点>


翌日。


夕方ごろ。


キャンピングカーが【ランヴェル帝都ていと】に到着する。


「こんなに早く帝都に到着するなんて……本当にキャンピングカーってすごいわね」


と姉上が感嘆していた。


検問けんもんを通って帝都に入場する。


帝都の光景が視界に広がる。


視界の中央奥ちゅうおうおく王城おうじょうが存在した。


女王が住む王家の宮廷きゅうていであり、巨大な城である。


その王城を中心として四方しほう城下町じょうかまちが広がっている。


異世界は赤い屋根の家が多いが……


帝都の城下町に存在する民家の屋根は、赤色ではなく、灰色をしている。


石っぽい色合いのため、少し無骨ぶこつで冷たい印象を受ける。


ただし、城下町にはとてもにぎわいがあり、活気と暖かさであふれていた。


「良い雰囲気ですね。人々の熱気を感じます」


帝都には、昔、何度か訪れたことがある。


しかし記憶にある帝都よりも、賑わっているように感じた。


「まあ、今はね。女王陛下の経済政策が上手くいってるのよ」


大通りがあって、そこから細かい路地や街路が張りめぐらされている。


街路をゆくのは、市民や町娘まちむすめものきゃく


魔法使い、戦士、狩人、衛兵、冒険者などのほか。


吟遊詩人ぎんゆうしじん大道芸人だいどうげいにん


行商人、旅人、観光客とおぼしき人々の姿もあった。


「まずは宿を取りたいところですが……即日予約は可能でしょうか」


この賑わいだと、宿はどこもいっぱいだろうな……と思った。


が、姉上が告げた。


「宿……? 私の屋敷に泊まればいいじゃない」


「姉上の家は帝都にもあるんですか?」


「そうよ。貴族はみんな帝都の貴族街きぞくがいに別荘を構えるでしょ? 私もブランジェ家の当主になったからね。お母様の住んでいた屋敷を売り払って、そのお金で自分の屋敷を買ったのよ」


なるほど。


じゃあ、貴族街に姉上の屋敷があるということか。


「それなら宿を取る必要はありませんね。姉上の家に泊めてもらってもよろしいですか」


「ええ、もちろん」


と姉上は快諾かいだくしてくれた。


私たちはさっそく姉上の家に移動する。





貴族街にある姉上の屋敷。


あまり豪奢ごうしゃなものでもなければ、巨大なものでもなかった。


子爵家にふさわしいぐらいの邸宅。


私は、そんな屋敷の二階にかいおくの部屋を与えられた。


天蓋てんがいつきのベッドとテーブルがあるだけのシンプルな部屋である。


「ここを使ってちょうだい」


「はい、わかりました」


「もう日暮れだし、夕飯にしましょうか」


「んー、ディナーについてですが、せっかく帝都に来たし、どこかに食べに行きたい気分です」


と私は告げた。


実は、街を歩いているときに、観光をしたくてうずうずしていた。


さしあたってレストランで外食したいと思う。

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