第10章386話:シュルード視点2

<シュルード視点・続き>


「しかし、そうか。エリーヌ嬢がブランジェ家を勝利へと導いたのか」


シュルードはぽつりとつぶやき、ほくそ笑んだ。


「これは、わがバルター家にも運が向いてきたかもしれないぞ」


「どういうことでしょうか?」


「簡単なことだ。俺がエリーヌと結婚すればいいのだ。そうすれば、ブランジェ家とのつながりを構築できる」


ブランジェ家はブロストン侯爵を倒し、領軍戦争を制した。


その結果、ブロストン家の財産を総取そうどりすることになる。


圧倒的な勝利を見せつけ、莫大ばくだいな土地と財産を得ることになったブランジェ家。


貴族界きぞくかいでの地位は大きく向上することは間違いない。


逆にブロストン側に味方をしていた貴族たちは、しばらくめしを食うことになるだろう。


(今後は、いかに勝者であるブランジェ家を取り込むかということが、政治の焦点になってくるはずだ)


とシュルードは時勢じせいを推測した。


「結婚といっても、もうエリーヌ嬢とは婚約破棄を成されたのではないですか?」


エリーヌが国外追放になったとき、婚約破棄が成立したと執事長は理解している。


しかしシュルードは言った。


「いや、うやむやになっただけだ。実質的に婚約破棄の状態にはなっていたが……書類上は、破棄になっていない」


「つまり――――」


「俺はまだエリーヌの婚約者ということだ」


シュルードは微笑んだ。


彼は告げる。


「この結婚を成立させて、政治的な地位を高めることにしよう。ブランジェ家とエリーヌ嬢には、俺が躍進やくしんするためのだいとなってもらう」


「女性としてエリーヌ嬢を愛することはないのですな?」


「当たり前だ。子爵令嬢など、どうせ冴えない女だろ。醜女しこめではないだろうが、興味を惹かれることはあるまい。おそらく結婚したあとで、愛人を別に作ることになるだろうな」


とシュルードは意思を口にする。


さらに以下のように告げた。


「エリーヌ嬢には、俺と結婚し、子孫だけ産んでくれればそれでいい。それ以上求めることは何もない」


かなり冷淡なことを言っているが、シュルードの平常運転へいじょううんてんだ。


シュルードは、他人を道具としか思っていない。


女性に関しても、自分の私利私欲しりしよくを満たすための道具ぐらいに認識していた。


「では、いつエリーヌ嬢と接触なされるおつもりで?」


「戦争の勝利を、陛下に報告しにくるだろう? つまりエリーヌとローラは帝都ていとに訪れるはずだ。そのときを狙って、声をかけることにしよう」


「なるほど。では私は、シュルード様とエリーヌ嬢が無事に結婚できるよう、いろいろと動くことにいたしましょう」


「ああ、よろしく頼む」


とシュルードは告げた。


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