第10章380話:屋敷を出発

「しかし、作ってはいただけるのですわよね?」


「はい、それは大丈夫です」


と私は答えた。


スフィーア殿下は告げた。


「では、キャンピングカーを2台購入させていただきたいですわ。製作依頼をしてもよろしいでしょうか?」


「わかりました」


「わらわも2台、依頼をしたい」


「はいはい」


2台……か。


おそらく殿下たちの狙いは、1台は自分用じぶんように利用すること。


もう1台は研究用けんきゅうようだろう。


キャンピングカーの現物げんぶつがあれば、分解して、製法を研究できるからだ。


私は言った。


「でしたら後日、製作をいたしますね」


「ああ。よろしく頼む」


「お願いいたしますわ」


かくして私は、2人に対してキャンピングカーを作る約束をしたのだった。






翌日。


帝都へ向かう日。


私は姉ローラとともに屋敷の前に立つ。


私はキャンピングカーを取り出す。


スフィーア殿下が言った。


「わたくしたちも、これから帝都ていとに戻る予定ですの」


「そうなんですか」


と私はあいづちを打った。


葵さんが言う。


「じゃから、また後日、帝都で会おう。おそらくわらわたちの馬車では、おぬしたちのキャンピングカーにはついていけんじゃろうからな」


葵さんとスフィーア殿下は馬車で帝都に向かうそうだ。


キャンピングカーを使う私たちに比べて、どうしても移動速度が遅くなる。


私たちのほうが、圧倒的に早く帝都にたどりつくだろう。


「わかりました。では、また」


と私は挨拶をした。


私とアリスティとローラが、キャンピングカーへと乗車する。


乗車してすぐに、発進した。





今日は、少し気温が高い。


我慢できないほどではないが……せっかくなので、エアコンをつけることにした。


あまりガンガン効かせるつもりはないので、少し車内の温度を下げる程度にする。


あと、音楽も流すことにした。


「この馬車、音楽も流せるんだ?」


とローラが感心した。


「はい。流せますよ」


「ふーん。本当に快適ね。キャンピングカーって、なんでもアリじゃない」


私は言った。


「特にBGMを流しながら食べるお菓子は最高ですよ。アリスティ」


「はい」


名前を呼ぶだけでアリスティはコーヒーとチョコレートを用意してくれる。


ローラはコーヒーを飲んだ。


にがッ!? な、なにこれ!?」


「ああ。それはコーヒーと言います。そちらのチョコレートと一緒に食べると、ちょうどいい味になりますよ」


「ふうん? チョコレートって、聞いたことのない菓子ね」


とローラは言いながら、チョコレートを口に放り込んだ。


もぐもぐと食べる。


すると、すぐに顔を紅潮させた。


「んんっ!? やだ、これ美味しい!」


どうやらチョコレートをとても気に入ったようである。


チョコレートを次々と口に含んでいき、幸せそうな顔をする。




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