第10章379話:キャンピングカー3

「いったいどういう仕組みなのじゃ!?」


「仕組みを説明するのはちょっと難しいというか、長くなりますね」


と私はやんわり説明を拒否した。


そのときスフィーア殿下が仰天しながら言った。


「し、しかし、氷魔導師がいなくても冷気を発生させられるなんて……これをエリーヌさんが発明したというんですの!?」


私は答える。


「はい。それも私が作りました」


「あ、あなた、とんでもないことをしている自覚がおありでして!?」


「ええと、まあ……」


冷気を発したり、氷を作ったりするのは氷魔導師がいないと難しい。


ゆえに、冷蔵庫の発明が画期的であるというのは自覚していた。




そのあと。


さらにキャンピングカーの設備紹介をおこなったところ。


「馬車の中にベッドがありますわ!?」


「なんじゃこのトイレは!? 椅子みたく座れる便器じゃと!?」


「車内に湯舟まであるの!?」


と葵さん、スフィーア殿下、姉上がそれぞれ、三者さんしゃ三様さんように驚嘆していた。


最後にキャンピングカーを発進させて、ドライブをおこなうことにする。


草原を時速70キロぐらいの快速で走る。


車窓しゃそうの景色の流れていく速さに、殿下たちが驚嘆する。


そして。


「この馬車、わらわも欲しいぞ!! で買う! わらわにも一つ造ってくれ!」


と葵さんが言いだした。


スフィーア殿下も同調する。


「わたくしも欲しいですわ! もし製法を教えていただけるなら、その製法を300億ディリンで購入いたしますわ!」


「300億!? そんな大金……城が3つ建つレベルですよ!?」


と私は驚いた。


立派な城を一つ建てるのに必要なのが50億~100億ディリンぐらいだ。


「キャンピングカーを製造して販売できる技術があれば、300億ぐらいは取り返せるでしょうからね」


とスフィーア殿下が微笑んだ。


「わ、わらわはさすがに300億は出せんが……150億なら出すぞ!」


と葵さんも負けじと値段交渉をしてくる。


私は答えた。


「うーん、お二人のためにキャンピングカーを造るのは構いませんが……製法を教えるのはちょっと」


車の製造方法は極めて複雑で、膨大な工程がある。


科学を知らない人間たちに解説していくのは大変だ。


できれば御免ごめんこうむりたい話である。


「まあ、貴重なレシピをそう易々と公開したくはありませんわよね」


とスフィーア殿下が見当違いな解釈で納得していた。


私は別に製法を隠したいわけではない。


しかし……まあ、そう解釈してくれても別に構わないので、特に否定はしなかった。





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