第10章378話:キャンピングカー2

葵さんとスフィーア殿下がキャンピングカーの車内に入ってきた


「おお……!」


と葵さんが感嘆の声を漏らす。


「これはすごいですわね」


とスフィーア殿下が、キャンピングカーの車内を見回しながら、目を輝かせる。


「へえ……中はこんなふうになっていたのね」


とローラも感心する。


ローラが感想を述べた。


「まるで高級宿みたいね」


「わたくしも、同じことを思いましたわ! 帝都の最高峰ランクの宿を思わせる内装ですわね」


最高ランクの宿屋にたとえられるとは光栄だ。


まあでも、キャンピングカーはスウィートホテルみたいなもんだからね。


「これはなんじゃ?」


と葵さんがキッチンを見つめて、首をかしげている。


私は答えた。


「ああ、そこはキッチンです」


「んん? キッチンじゃと?」


「はい」


私は解説する。


「ここにまな板を置いて調理をおこないます。あと、ここをひねると火が出ます」


私がツマミを回すと、シュボッと音を立てて火がついた。


「で、ここをひねると水が出ます」


私が蛇口を回すと、水が流れ始める。


その場にいた全員が、ぽかんとした表情を浮かべた。


ローラが尋ねてきた。


「な、なんで馬車なのにキッチンがあるの!?」


「キャンピングカーは旅行用の乗り物なので」


「う、うーん……そういうことじゃなくて! 馬車にキッチンっておかしくない!?」


とローラが困惑していた。


葵さんがつぶやく。


「おい……スフィーア。帝国の馬車には、キッチンがついているタイプの馬車もあるのか?」


「いえ、ありませんわよ。このキャンピングカーが特殊なだけですわ」


「ふむ、やはり一般的ではないのじゃな。……しかし、どういう原理なのじゃ? ひねっただけで水が出たり、火が出たりするのはさすがにおかしいじゃろ?」


葵さんが疑問を口にしたので、私は答えた。


「そういうふうなカラクリを使っているので」


「カラクリ……魔法ではないということか?」


「魔法ではないですね」


キャンピングカーには魔法を使っている部分もある。


しかし、多くの場面で魔法を使わず、科学技術だけで製造している。


「思ったよりすごい馬車じゃな。こっちはなんじゃ……? おお? 開いたら、冷たい空気が流れてきたぞ!?」


葵さんが冷蔵庫を開きながら、興奮気味に言った。


「あ、それは冷蔵庫ですね。食材やジュースを保管する箱です」


「氷魔導師がいないのに、冷気が発生しておるぞ!? これはすごい代物じゃぞ!」


と葵さんが賞賛した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る