第10章377話:キャンピングカー

屋敷の外。


ブランジェ家の屋敷は、領都りょうとのはずれにある。


屋敷の周囲には雑木林ぞうきばやしがあったり、高台たかだいがあったりするが、屋敷から南西の位置に草原が存在する。


屋敷から徒歩1分ぐらいの距離だ。


その草原まで、私たちは移動した。


「それではキャンピングカーを出しますね」


と私は告げる。


アイテムバッグからキャンピングカーを取り出した。


草原のうえにキャンピングカーが現れる。


「ほう」


「これが……」


葵さんとスフィーア殿下が、感心したような声を漏らす。


背後にいる護衛のみなさんも興味深そうな目でキャンピングカーを見つめている。


「こちらがキャンピングカーです」


「大きいですわね」


とスフィーア殿下。


「これが馬車……か?」


と葵さんが尋ねてきた。


「馬を使わないので、正確には馬車ではなく自動車ですね。まあ、呼ぶときは馬車でも構いませんが」


と私は解説する。


葵さんがキャンピングカーに近づき、そのボディをまじまじと見つめる。


「我々が知る馬車とは全く別物じゃな。どんな素材で出来ているかもわからん……依花よりか、わかるか?」


「……不明」


と依花さんが答えた。


「依花でもわからんか……」


と葵さんが言った。


私は尋ねる。


「依花さんはその道の専門家だったりするんですか?」


「ん……ああ。こやつは鍛冶師なのじゃ」


「なるほど」


鍛冶師か。


だとすると金属や素材については、詳しいだろうな。


ちなみにキャンピングカーのボディに使われているのは、鋼鉄……つまり鋼だ。


だから葵さんたちが全く知らない素材というわけではない。


ただ車のボディは塗装とそうしたうえで、特製の樹脂じゅしによってコーティングをおこなっているため、未知の素材に見えているだけである。


「中はどうなっているんですの?」


とスフィーア殿下が尋ねてきた。


ぜひ乗ってみたいという表情だ。


「では、実際にお乗りください」


と私は告げてからキャンピングカーのドアを開けた。


まず、私がキャンピングカーの中に搭乗する。


土足どそく厳禁げんきんなので、中に入るときは、ここで靴をお脱ぎください」


くつぎスペースを指さして、私はそう注意喚起した。


「わかりましたわ」


「承知した」


葵さんとスフィーア殿下が靴を脱いで、キャンピングカーの中へと上がってくる。


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