第10章376話:エリーヌの錬金魔法

王女スフィーアも告げた。


「まるで奇跡のような力ですわね」


さらに彼女は、ローラに対して質問を振った。


「エリーヌさんの錬金魔法は、これほどまでに飛びぬけていたのですか?」


ローラは首を横に振る。


「いいえ。私が知る限り、エリーヌはここまでの錬金魔導師ではありませんでした。正直、私も信じられない想いです」


そう述べたローラが、今度は私のほうを見やった。


尋ねてくる。


「エリーヌ……あなた、今まで手加減していたの?」


「手加減……というわけではありませんよ」


と私は答えた。


以下のように補足をする。


「ただ、錬金魔法の本質的な部分に気づく機会に恵まれて、その可能性の広さを理解したのです」


適当に言いつくろった言葉ではない。


実際に、錬金魔法の可能性は無限大だ。


そのことを理解できたのは、前世の知識――――科学を思い出したからである。


科学と錬金魔法を組み合わせることで、多くのことが可能になる。


それは科学と同等だったり、科学を超えたものだったりするので、私も日々ひび驚かされるばかりだ。


「なるほど。あなたの錬金魔法の凄まじさについては、よく理解しましたわ」


と王女スフィーアが話題の区切りをつけた。


そうして告げる。


「――――話を戻しましょう。キャンピングカーについて」


ああ、キャンピングカーの話だったね。


完全に話がそれてしまっていた。


私は、葵さんから刀を返してもらい、アイテムバッグへと放り込んだ。


王女スフィーアが尋ねてくる。


「さきほどキャンピングカーについて『速度が出る』とおっしゃっておられましたわね……それはつまり、普通の馬車よりも速いということですの?」


「はい」


王女殿下の質問に、私はうなずく。


さらに王女スフィーアは尋ねてくる。


「どの程度、速いのでしょう?」


「2倍以上は出ますね」


「……そんなに」


と王女殿下は目を見開いた。


葵さんも感心したような声を漏らしている。


王女殿下は尋ねてきた。


「そのキャンピングカーという馬車について、実際に見せていただくことは?」


「もちろん可能です」


と肯定すると、王女殿下は身を乗り出してきた。


「さっそく拝見したいですわ。今すぐ……というのは可能ですの?」


「まあ、私は構いませんが……」


私はローラに視線を向けた。


ローラはうなずく。


「そしたら屋敷の外にいきましょうか。葵さんもよろしいですか?」


「ああ。わらわも新型馬車にはとても興味があるし、是非とも見学させていただきたい」


と葵さんが答えた。


かくして私たちは、屋敷の外へと移動することになった。


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