第10章375話:実演

「わかりました。では実演させていただきます」


と私は宣言した。


ソファーを立ち上がる。


アイテムバッグから小さな作業台を取り出した。


その作業台のうえに、素材を置いていく。


魔石や砂鉄など……である。


「わくわくしますわね」


「うむ。本当に一瞬で錬成できるのかも、見物みものじゃな」


スフィーア様と葵さんがそう語り合っている。


「何を作るつもりなの?」


と姉上が聞いてきた。


私は作業の準備をしながら答える。


「まあ、見ててください」


そして、素材を並べ終わった。


私は宣言する。


「では開始させていただきます」


アイテム錬成を開始する。


1秒後。


錬成が完了した。


「!!?」


「は?」


「え?」


その場にいた全員がぽかんとした。


「ふふ」


とアリスティだけが得意げな顔をしている。


ちなみに私が作ったのは……


刀だ。


さやはない。打刀うちがたなである。


「こ、これは……刀か!?」


と葵さんが反応する。


私はうなずいた。


「はい」


「刀の製法を知っていたのか!? いや、しかし、玉鋼たまはがねがないと作れないはずじゃが……」


「玉鋼も、たったいま錬成しました」


玉鋼の原料は砂鉄である。


砂鉄の中に存在する不純物を取り除き、鉄だけ残すことで、玉鋼となる。


本来なら3日ほどかけて、同じ作業を繰り返しながら不純物を除去していくのだが……


私には錬金魔法があるので、一瞬で完成品を製作することができる。


「玉鋼の造り方がわかっていれば、錬金魔法を用いて製作することができます」


「今の一瞬で、玉鋼も作り、それを刀の素材にしたということか!?」


「はい」


と私は肯定した。


葵さんが言ってくる。


「その刀、触らせてもらってもよろしいか?」


「はい、どうぞ」


と私は刀を差しだした。


抜き身の刃であり、危険なので、そっと葵さんに手渡す。


葵さんは刀を受け取り、先端から後端までをじっと眺めた。


業物わざものじゃな。一流の刀工とうこうが打ったかのような名刀めいとう……しかも、わが国に伝わる製法ではないな」


おおっと。


刀を見るだけで、そこまでわかるか。


もちろん日本の伝統的な製法なので、異世界に伝わる刀の製法とは違うだろう。


依花よりか、どう思う?」


と葵さんが、背後にいる依花さんに尋ねた。


すると依花さんは短く答える。


「化け物」


それが、依花さんが私の前ではじめて口にした言葉であった。


「わらわもそう思う。正直、人間業にんげんわざではないな、コレは」


と葵さんが同意する。

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