第10章374話:錬成能力について

「ふむ……」


王女殿下が、少し疑うような目を向けてくる。


「それが本当ならばとんでもないことですわ。戦場で役に立つ新型馬車の製作は、一流の職人でも簡単ではありませんから。……しかし、本当にご自身でご製作なされたのですか。何か証明できるものはあるでしょうか?」


こういう聞き方をしてくるということは、王女殿下はおそらく、私の過去を知っているな。


大したことない錬金魔法しか使えず、無能むのうあつかいをされていた過去の私。


そんな人間が、たかだか1年程度で、新しい馬車を生み出すほどに成長するとは、信じられないのだろう。


(実際、キャンピングカーの製作は、前世の知識があるからできたことだしね)


と私は思いつつ、答えた。


「うーん……証明というか、証人ならばおります」


「どなたでしょう?」


「アリスティです。キャンピングカーを製作するところを、横で見ていましたから」


全員の視線が、アリスティへと向かった。


王女殿下が尋ねた。


「本当なのでしょうか。アリスティさん」


「はい。エリーヌお嬢様は間違いなく、キャンピングカーを自作なされました」


とアリスティは即答した。


さらにアリスティが告げる。


「お嬢様は錬金魔法の天才でございます。今ここで、実際に実演なされてはいかがでしょう?」


「……ん?」


と私はきょとんとした。


アリスティが続けて力説する。


「お嬢様は一瞬でアイテム錬成をおこなうことができます。完成品のクオリティだけでなく、製作スピードも天才的な速さです。実際に錬成しているところをご覧になれば、すぐにわかることでしょう」


あの……アリスティ?


いったい何を言っているんだい?


私の錬金魔法の実力が疑われていることを察して、ムキになっているのか。


私にアイテム錬成の実演させて、実力を証明させたがっているようである。


「あの六傑のアリスティ・フレアローズにここまで言わせるとは、それほどすごい錬金魔導師なのか」


と葵さんが興味を示した。


王女スフィーアが言った。


「私も興味が湧きましたわ。一瞬で錬成をできるというのは本当ですか?」


「え、ええと、まあ」


と私はやんわり肯定する。


「では、せっかくですし、実演していただけませんかしら?」


と王女スフィーアが要求してくる。


ううむ……


嫌です、と答えるわけにはいかない空気だ。


やるしかないか。

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