第10章373話:戦の武器

「わかりました。少し、考えさせていただいてもよろしいでしょうか」


「もちろん構いませんわ」


と王女スフィーアは肯定した。


王女スフィーアはティーカップを手に取って、茶を飲む。


私は尋ねる。


「えっと……用件はそれだけでしょうか?」


すると王女スフィーアは、


「いいえ」


と否定した。


彼女は告げる。


「実は、今回のブロストン軍とブランジェ軍による戦争――――『ブランジェ平原の戦い』とでも呼んでおきましょうか――――このいくさのことは、我々王家も注目しておりましたわ」


まあ、そうだろうね。


なにしろ領軍戦争は、まれにしか起こらない戦争。


しかも総勢そうぜい2万名近くの兵士が参加する、内戦としては極めて大規模なものだ。


戦争の結果は、貴族の情勢を大きく変化させるだろうし、王家や上級貴族が注目しないはずがない。


戦争時せんそうじには、国が組織した調査隊ちょうさたいはなって、戦場を観察させておりました。その調査隊たちによって、さまざまな情報がもたらされておりますわ。たとえばブランジェ軍は、見たこともない馬車や、兵器を使っていたとか」


見たこともない馬車とはキャンピングカー、見たこともない兵器とは銃火器じゅうかきのことだろう。


王女スフィーアは告げる。


「その件に関して、いろいろとお尋ねしたいと思いましたの」


つまりブランジェ家が所有する新兵器しんへいきについて、把握しておきたいといったところか。


葵さんも告げる。


「他国の使う武器や兵器に関しては、わらわも興味がある。じゃから今回、この会合に参加させてもらうことにしたのじゃ」


葵さんは武士家ぶしけ棟梁とうりょう


いわば領主であり、強い兵器の存在に興味があるのは当然だろう。


葵さんは言う。


「もちろん、有益な情報を開示してもらったあかつきには、相応の礼をすると約束しよう」


……ふむ。


私はどこまで情報を明かしていいものか、瞬時に頭の中で思考する。


『新型馬車』の存在が知られている以上、さすがに王女殿下にキャンピングカーのことを話さないわけにはいかない。


兵器については、戦場で最も目立っていた機関銃とゴーレム爆弾のことだけ話せばいいと思う。


よし。


私は口を開いた。


「そうですね……まず『見たこともない馬車』と表現しておられた馬車についてですが、おそらくキャンピングカーのことでしょう」


「キャンピングカー、ですか」


「はい。旅行用りょこうようの馬車なのですが、速度が出るので、戦車としても使えます」


「それは……あなたが国外で入手したものですか?」


「いいえ。キャンピングカーは私の錬金魔法で製作しました」


と私は正直に答えた。

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