第10章367話:古代樹と帝都

夕刻。


ベッドに腰掛こしかけたままの私は、図鑑を閉じた。


「だいたいわかりました」


人魚の指輪の製法について、おおむね解読できた。


ただし【古代樹の尖花】が手元にないため、一部、解読かいどく不十分ふじゅうぶんになってしまったところがある。


それについては古代樹の尖花を入手してから、あらためて製法を研究すべきだろう。


(とりあえず、古代樹について姉上に聞きにいきましょう)


図鑑をアイテムバッグに片付ける。


立ち上がった私は部屋を出た。


姉上を探しに廊下を歩く。


廊下のがりかどで姉上と会えたので、質問した。


「姉上。聞きたいことがあるのですが」


「何かしら」


「古代樹の森……という地名をご存知ありませんか?」


「古代樹の森というと、帝都の近くにある森のことね」


やっぱり帝都ていと近辺きんぺんか。


姉上は尋ねてくる。


「そこに何か用事でも?」


「はい。欲しい素材がありまして」


「ふーん? でも、古代樹の森は、なかなか難易度の高いフィールドだと聞いているわよ。出てくる魔物が強いらしいから」


「そうなんですか。まあでも、こちらにはいろいろ武器もありますし、アリスティもいますから」


いまの私たちの戦力ならば、よほどの高ランクダンジョンでもない限り、苦戦するような事態になることは考えにくい。


「そうね。あなたたち二人なら、問題なく探検できるでしょうね」


と姉上は微笑んだ。


それから姉上は言ってきた。


「帝都に行くんだったら、私も連れていってもらえないかしら?」


「姉上も帝都に用事が?」


「ええ。私たち、領軍戦争に勝利したでしょ? 陛下に対して、そのご報告をしに行きたいのよ」


なるほど。


確かに戦勝せんしょう報告ほうこくをしにいくのは大事だ。


領軍戦争は国内の勢力が激変げきへんするような出来事。


今後のことを陛下や、国の上層部と相談する必要もあるだろう。


「あと、あのキャンピングカーというのに乗ってみたいわ」


と姉上は言ってきた。


そう申し出られることを、私は予想していたので、微笑みながら答えた。


「構いませんよ。キャンピングカーだったら、1日もあれば帝都につきますので、移動時間も短縮できますし」


「そんなに速い乗り物なの? いや、そうか。馬車より何倍も速かったわね」


戦場でキャンピングカーが走り回ったことを思い出したのか、姉上は納得した。


「じゃあ、明日……いえ、少し準備があるから、3日後、帝都に出発することにしましょう」


「わかりました」


と私は答えた。





――――――――――――――――

お知らせ:

リズニス王国の湖にて、スローライフを楽しむエリーヌたちのイラストを、近況ノートに掲載させていただきました。

(イラストはカオミン先生に描いていただきました。書籍の挿絵として使用される予定です)


 ↓

https://kakuyomu.jp/users/teru0024a/news/16818093082637328230

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る