第10章366話:製法

ふむふむ。


なるほど。


まず人魚の指輪の効果は『水泳すいえい能力のうりょくの獲得』らしい。


人魚のごとく泳げるようになるというのは、とても魅力的だ。


是非とも製作したい。


素材を確認する。


人魚の石、


水の魔石、


シシドラコの鱗、


魔宝玉、


……以上の素材は所持している。


作るとなると魔宝玉を消費するのは痛い。


魔宝玉はアーティファクトの素材でもあるからだ。


アーティファクト素材の中でも、最も手に入りやすい素材ではあるものの……


そうそう集まる素材でもないんだよね。


ブロストン侯爵の遺品にあったりしないだろうか?


そして。


唯一、足りない素材は、【古代樹こだいじゅ尖花せんか】だ。


聞いたこともない素材だが、古代樹という言葉には聞き覚えがあった。


(たしか……帝都ていと近辺きんぺんに、そんな地名の森があったような……?)


ランヴェル帝国の王都である【ランヴェル帝都ていと】。


その近くのフィールドに、古代樹の森があったような、なかったような……


ずいぶん古い記憶なので、うろ覚えだ。


あとで姉上に確認してみるか。


「で、製法は……」


指輪の具体的な製造方法は次のページだと書いてあった。


私はチェックしてみる。


次のページ。


たしかに【人魚の指輪】の製法について、詳細が記されている。


ざっと読んでみたところ、素材さえあれば、手順は複雑ではないようだ。


だが錬金魔法における、深い理解が問われるような製法となっている。


なるほどこれは一筋縄ひとすじなわではいかない。


手順は全部で7つ。


しかし書かれている通りに実行しただけでは、1つ目の手順すらまともに機能しない。


そして1つ目の手順がわからなければ、2つ目の手順からは、わけがわからなくなってしまうという仕様だ。


(なんだか理系の専門書を思い出すなぁ……)


必要最低限ひつようさいていげんのことだけが書かれており、説明不足せつめいぶそく不親切ふしんせつ


省略された途中式とちゅうしきを、自分の思考力で埋めなければならず、正しい理解に時間を要する。


しかし、やりがいはありそうである。


しばらく熟考してみようと思った。



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